研究課題/領域番号 |
24560906
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
田口 正美 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90143073)
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研究分担者 |
齋藤 嘉一 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10302259)
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キーワード | 製造プロセス / 電解プロセッシング / 不溶性アノード / 酸素過電圧 / 省エネルギー |
研究概要 |
(1)粉末圧延法による「低酸素過電圧の酸化物微粒子を分散させたPb基不溶性アノード」の製造および材料試験による機械的特性の評価: 粉末圧延法により「低酸素過電圧の酸化物微粒子を分散させたヘテロ構造Pb基不溶性アノード」を製造した.ここで,低酸素過電圧の酸化物微粒子としては,実用的なβ-MnO2やCo3O4の他に,PtO2,IrO2,RuO2なども採用し,粉末圧延装置によりこれら酸化物を含有したPb基合金シートを製造した.さらに,シート状のPb基合金に関しては,引張試験ならびに硬度試験を実施した.これらの材料試験で求められる破断応力やビッカース硬度などの機械的特性からは,Pb基合金不溶性アノードの耐クリープ性に及ぼす材料側因子の影響を解明できた.(2)Pb基不溶性アノードの酸素過電圧の低減とZn電解採取における所要電力の削減: 「低酸素過電圧の酸化物微粒子を分散させたPb基不溶性アノード」を用い,Zn電解採取試験を実施した.すなわち,(ZnSO4+H2SO4)電解液中で長期間定電流電解を行い,印加電流,槽電圧,アノード電位,カソード電位を計測し,電圧効率,電流効率およびエネルギー効率を算出した.また,電解後のアノード表面状態ならびに化学結合状態をXRDおよびXPSで分析するとともに,カソード析出Zn中の汚染Pb量をICP-MASSで計測し,新規不溶性アノードの有用性を評価した.その結果,新規不溶性アノードであるPb-1.00wt.%RuO2粉末圧延合金の酸素過電圧は,現行のPb-0.7wt.%Ag合金に比して約319 mV低減されることが判明した.槽電圧が319 mV低下した場合,電力原単位の削減効果は製品Zn 1t 当たり△293 kwh程度となる.この値はZn電解プロセッシングにおいて9%超の消費エネルギー削減に相当し,新規不溶性アノードの有用性が確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書のスケジュール通りに実験等が進展している.また,本研究の目的は,電解プロセッシングにおける電力料金を低減させるとともに,製品としての寿命が長い新規不溶性アノードを実用化し,素材産業の製造コスト削減に寄与することである.新規不溶性アノードの特性は,この目的を充分に達成できるレベルにある.
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今後の研究の推進方策 |
(1)Ru酸化物の酸化度と酸素過電圧の関係の解明: 反応性スパッタにより酸化度の異なるRu酸化物を作製し,RuO2の酸化度と酸素過電圧の関係を明らかにする.(2)Ru酸化物粉末の製造法の確率: 新規不溶性アノードの実用化のため,安価かつ高性能なRu酸化物粉末の製造法を確立する.具体的には,加水分解によりRu酸化物微粒子を製造し,その製造コストおよび酸素過電圧低減効果を明らかにする.(3)クラッドタイプPb基不溶性アノードの製造と特性評価: Pb-RuO2粉末圧延アノードの作製方法の改善を行い,実用サイズの新規不溶性アノードを製造する.すなわち,高価なRuO2の使用量を低減するため,表層にRuO2を濃化させたクラッドタイプのPb基不溶性アノードを作製し,長期間の実操業試験を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
注文した物品が当該年度に納入できなかった.そのため,次年度予算にて購入する. 差額分は,平成26年度において物品費として使用する.
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