研究課題/領域番号 |
24560908
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
櫻田 修 岐阜大学, 工学部, 教授 (10235228)
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研究分担者 |
吉田 道之 岐阜大学, 工学部, 助教 (70431989)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アルミニウム / アルミニウム溶湯 / 溶融アルミニウム / ろ過フィルタ / フィルタ / 耐食性 / 酸化物 / コーティング |
研究概要 |
アルミニウムはリサイクルの優等生とも言われており,資源の有効活用に適した金属である。今後リサイクルが進み,回収されたアルミニウムの再利用率が高くなることが予想され,従来以上にアルミニウムを再溶融した時の介在物の除去が重要な課題となってくる。アルミニウムの製造の際に溶融したアルミニウム(アルミニウム溶湯)中の介在物を除去するためにアルミナ質セラミックスを骨材とした「チューブフィルタ」(Rigid Media Tube Filter, RMF)が産業界で広く利用されている。このチューブフィルタについて,申請者らが見出した酸化アルミニウムおよび酸化イットリウム系化合物前駆体水溶液を用いて表面処理を行うことによる耐久性改善を検討することとした。 アルミニウム溶湯中の介在物除去を目的としたフィルタの材料開発にあたり,①従来のフィルタへアルミニウムに対して耐食性の効果が期待できる酸化アルミニウムおよび酸化イットリウム系酸化物のコーティング,②さらに,申請者らが見出したホウ酸アルミニウム9Al2O3・2B2O3(以下『9A2B』)というフィルタの基材となるアルミナ質セラミックスを結合させる結合材のかわり,あるいはそれにさらに添加する材料として,酸化イットリウム系酸化物の適応性の検討を実施中である。初年度は,a)酸化イットリウム系酸化物のアルミニウム溶湯中での安定性の検討,b)9A2Bと酸化イットリウム系酸化物を用いて,モデルフィルタを作製し,生成物の組成をXRDで評価,強度の変化,走査電子顕微鏡(SEM)を用いた微細構造観察を行い,フィルタの骨材である粗粒のアルミナ質セラミックスの結合材としての有効性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
a)アルミニウム溶湯中での酸化イットリウム系酸化物コーティング膜の安定性の検討 モデル実験として,アルミニウム溶湯中にイットリウム系酸化物膜をコーティングしたステンレス基板を種々温度,時間浸漬して,コーティング膜の有無によるステンレスの耐食性評価を行った。アルミニウムの製造でアルミニウム溶湯が利用される温度700℃でモデル基板として用いたステンレスをアルミニウム溶湯に浸漬後,すぐに腐食がはじまり,アルミニウム溶湯中に溶けてしまうことがわかった。イットリウム系酸化物膜をコーティングすることで,実際にアルミニウム溶湯を取り扱う温度よりも高い800℃でも1日以上浸漬しても基板は溶けず,その耐食性が著しく向上するという結果が得られた。しかし,実際にフィルタとして利用するには長時間の安定性が求められ,耐食性の向上にコーティング膜の緻密化が問題となることがわかった。 b)フィルタ骨材の結合材としてのイットリウム系酸化物の有効性の検討 私達が見出したアルミニウム溶湯用フィルタの骨材である粗粒のアルミナ質セラミックス粒子を結合する9A2Bという結合材と同様の手法で,イットリウム系酸化物を結合材としてモデルフィルタの作製を検討した。現状,同様の手法ではイットリウム系酸化物では,フィルタとして利用するための十分な強度が得られないという結果となっている。XRD,SEMを用いた評価結果から,9A2Bを結合材としている温度ではイットリウム系酸化物が骨材のアルミナ質セラミックスとの反応性が低いために,結合材として十分な強度が得られないことに問題があることがわかった。次年度,さらなる検討を実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
a)イットリウム系酸化物のコーティング方法改善の検討 モデル基板上にイットリウム系酸化物の緻密膜をコーティングする方法を確立するための検討を行う。基板上の表面状態をコーティング前に改質,基板に対する濡れ性改善のためにコーティング水溶液のpH,界面活性剤の添加について検討を実施する。さらに,工業的には最低でも1週間以上の期間,フィルタの安定性が求められることから,スピンコーティング法,ディップコーティング法などで緻密な膜の厚膜化について最適条件の確立のための検討を行い,長期間の安定性を目指す。(櫻田,吉田,大学院博士前期課程学生) b)フィルタの骨材であるアルミナ質セラミックスの結合材についての検討 昨年度の結果化から,我々が報告した9A2Bを結合材として利用する場合と同様の手法ではイットリウム系酸化物では,ろ過フィルタとして利用するための十分な強度が得られないという結果となっている。フィルタを作製するプロセスを見直して,イットリウム系酸化物など新規な結合材について,強度試験,走査電子顕微鏡による内部構造観察から最適化について検討を行う。さらに,実際にアルミニウム溶湯を用いたモデルフィルタについての溶出挙動の検討も実施し,作製したフィルタの評価を実施する。(櫻田,吉田,大学院博士前期課程学生,山川(研究協力者))
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に設備備品の購入の予定はありません。 研究を遂行上必要となる材料,器具,各種試薬等の購入,研究発表,謝金などを予定。
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