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2013 年度 実施状況報告書

レアアース回収のためのケイ酸塩系スラグの組成開発

研究課題

研究課題/領域番号 24560911
研究機関愛媛大学

研究代表者

武部 博倫  愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (90236498)

キーワードケイ酸塩スラグ / リン酸塩 / レアアース回収 / 吸収特性 / 組成 / 溶出試験 / 赤外分光 / ガラス構造
研究概要

本研究の目的は、溶融プロセスでケイ酸塩系スラグ及びガラスの一部にレアアースを濃縮するための、スラグ組成の開発とプロセス条件の確立を行うことにある。
本年度は、リン酸塩、ケイ酸塩及びアルミノケイ酸塩系スラグ・ガラスの組成、特性と構造について研究を継続的に進め、各系の特徴に対する新しい知見が得られた。また非鉄製錬スラグの耐火物との界面反応や白金板との界面相互作用についても実験を行い、実用スラグの化学的特性への理解を深めた。実在するスラグや工業ガラスの組成について、ホットサーモカップル法を用い、均一融体形成温度の決定とその後の冷却過程でのガラス形成の有無を調べた。その結果、均一融体とガラスの形成が可能な模擬ガラスカレットとして、Na2O-CaO-SiO2-Al2O3 (NCSA)系を取り上げることに決定した。このNCSA系模擬ガラスカレットに希土類イオンとしてNd3+またはDy3+とP2O5を添加し、レアアース濃縮の可能性を検討した。Nd3+は前年度の研究から評価方法が確立しているイオンであり、Dy3+は希土類磁石の耐熱性向上のために不可欠な希少価値の高いイオンである。
前年度の研究から、NdがPO4四面体に優先的に配位する組成条件は[R2O+R'O]/[P2O5]≦1 (モル比)である。ここでRはアルカリ金属、R'はアルカリ土類金属である。希土類イオンの4f-4f軌道間電子遷移による吸収スペクトルを測定し、得られたスペクトルにおける各吸収帯の形状やピーク波長から希土類イオン周囲の局所構造を判断することが可能である。Nd3+を添加したNCSA系においても、上記の関係式が成立することを実験的に確認した。またDy3+を添加したNCSA系でも、主要な4f-4f軌道間電子遷移の6H15/2 → 6H9/2, 6F11/2遷移について評価し、同様な関係式の成立を見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画どおり、基礎系となるリン酸塩、ケイ酸塩及びアルミノケイ酸塩系ガラスの特性と構造についての研究や非鉄製錬スラグの化学的特性についての研究を実施し、酸化物スラグ及びガラスへの理解を深めることが可能であった。実在するスラグや工業ガラスの組成に近いガラスカレットについて調べ、いくつかの工業スラグにおいては、リン酸を添加後の溶融過程で均一融体を得ることができないことが判明した。しかしながら、試行錯誤の実験を繰り返した結果、Na2O-CaO-SiO2-Al2O3系模擬ガラスカレットに対しては均一溶融とガラス形成が可能であることがわかった。また同系に希土類イオンとして初年度と同様のNd3+イオンに加えて、磁石の耐熱性を上げるために不可欠な添加イオンDy3+を添加し、4f-4f軌道間電子遷移による吸収スペクトルにおいて、希土類イオンの周囲にPO4四面体が優先的に配位する組成条件を見出すことが可能であった。

今後の研究の推進方策

次年度は、本年度の結果を基に得られた試料に対して、中性水または酸性及びアルカリ性水溶液への溶出試験を行い、溶出後の溶液に希土類イオンとリン酸イオンが優先的に溶出するか否かについて調査を行う。また希土類酸化物とリン酸を添加したリンケイ酸塩ガラスに対し、相分離や結晶化のための熱処理を施し、熱処理の微細構造に及ぼす効果を明らかにするとともに、その後の希土類イオンとリン酸イオンとの優先的な溶出挙動の有無についても実験研究を行う。

次年度の研究費の使用計画

当初の計画どおり研究は進んだものの予定よりも消耗品の購入を抑制して実験を滞ることなく進めることが可能であった。また最終年度には得られた研究成果を国内外の会議で発表することを予定しているため、平成25年度の予算の一部を、平成26年度の旅費と消耗品の費用に確保することとした。
平成26年度は最終年度であるため、引き続き精力的に実験研究を実施するとともに本研究の総括を行う。このため、国内外での会議での研究成果の発表や他の研究者との研究動向の調査と情報交換を積極的に行う予定である。このため本年度の予算は消耗品と旅費及び実験補助者への謝金で使用する計画である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Dissolution behaviour of SnO-P2O5 and SnO-P2O5-B2O3 glasses in water2013

    • 著者名/発表者名
      Hiromichi Takebe, Takuya Kobatake, Akira Saitoh
    • 雑誌名

      Physics and Chemistry of Glasses: European Journal of Glass Science and Technology B

      巻: 54 ページ: 182-186

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Thermal properties and crystallization behaviour in ZnO-SnO-P2O5 glasses2013

    • 著者名/発表者名
      Akira Saitoh, Shoji Anan, Hiromichi Takebe
    • 雑誌名

      Physics and Chemistry of Glasses: European Journal of Glass Science and Technology B

      巻: 54 ページ: 177-181

    • 査読あり
  • [雑誌論文] リンケイ酸塩ガラスにおけるレアアース濃縮のための組成条件2013

    • 著者名/発表者名
      中村洋貴、斎藤全、武部博倫
    • 雑誌名

      Journal of MMIJ

      巻: 129 ページ: 591-595

    • 査読あり
  • [雑誌論文] リン酸塩ガラスの特徴的な構造と機能およびその応用2013

    • 著者名/発表者名
      武部博倫、斎藤全
    • 雑誌名

      セラミックス

      巻: 48 ページ: 927-930

  • [雑誌論文] Preparation of Porous Glass Films Using Phase Separation Phenomenon and Growth Behavior of Phase-separated Structure2013

    • 著者名/発表者名
      C. Hwang, J. Kim, B. K. Ryu, H. Takebe
    • 雑誌名

      Journal of Materials Science

      巻: 48 ページ: 8068-8076

    • 査読あり
  • [学会発表] 白金板とスラグ融体の界面相互作用2014

    • 著者名/発表者名
      武部博倫、道上聖史、森安諒
    • 学会等名
      資源・素材学会春季大会
    • 発表場所
      東京大学生産技術研究所、東京
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] マグネシウム-クロム質耐火物の微細組織とスラグ融体の界面反応2013

    • 著者名/発表者名
      武部博倫、福井智也、森安諒
    • 学会等名
      資源・素材2013(札幌)
    • 発表場所
      北海道大学、札幌
    • 年月日
      20130903-20130905
  • [学会発表] Mixed Network Structure of Tin Boro-phosphate Glasses by Advanced 1D/2D Solid State NMR and Infrared Spectroscopy2013

    • 著者名/発表者名
      Hiromichi Takebe, Akira Saitoh, Gregory Tricot
    • 学会等名
      23rd International Congress on Glass
    • 発表場所
      Prague, Czech Republic
    • 年月日
      20130701-20130705
  • [学会発表] Effects of Al2O3 on the thermal properties and structure of CaO-Al2O3-SiO2 glasses2013

    • 著者名/発表者名
      Shoji Takahashi, Hiromichi Takebe
    • 学会等名
      23rd International Congress on Glass
    • 発表場所
      Prague, Czech Republic
    • 年月日
      20130701-20130705
  • [学会発表] 乾式製錬小委員会の立ち上げに向けて

    • 著者名/発表者名
      武部博倫
    • 学会等名
      素材プロセシング第69委員会 第4分科会(産学連携促進)〔第10回〕研究会
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス、東京
    • 招待講演
  • [備考] 愛媛大学材料プロセス工学研究室HP

    • URL

      http://mpel.jp

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公開日: 2015-05-28  

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