研究課題/領域番号 |
24560912
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
永山 勝久 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (80189167)
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キーワード | 無容器プロセス / 次世代デバイス / 結晶成長 |
研究概要 |
平成25年度においては、申請初年度に続き、自由落下部2.5mのショートドロップチューブを用いて、次世代高効率球状太陽電池SiとIII-V族化合物半導体単結晶微粒子創製を目指し実験と解析を行った。以下に、申請2年目となる平成25年度の実施概要と成果を記す。 1.次世代高効率球状太陽電池Si創製実験 Fe族3d遷移金属(Fe,Co,Ni,Mn)添加Siの過冷度と結晶成長の関係解明を目指し、実験と解析を行った。その結果、3d遷移金属を添加(添加量:1~5%)した全てのSi微粒子は、純Siとは全く異なり高過冷度状態で無容器凝固すると考えられる表面構造を示した。また、3d遷移金属はSiの粒界部にシリサイドを形成し、併せて微粒子表面に複数の微細なシリサイドの突起を形成する特異な微細構造を示すことが明確化された。また、p型及びn型Siの過冷度と結晶成長の関係解明を目的に、13族元素Alと15族元素Sbを添加したSiのドロップチューブ実験を行った結果、両微粒子試料共に微量添加により過冷度は顕著に増大し、粒界部と表面部にAlとSbが単体で凝集する微粒子生成が認められた。 2.III-V族化合物半導体単結晶微粒子創製実験 In50Sb50及びGa50Sb502元融液をドロップチューブ内で無容器凝固させた結果、前者においてほぼ単結晶構造を有する微粒子生成に成功を修める結果を申請初年度に得ている。そこで、本年度はInの一部をCo,Fe,Cuで置換した3元及び(In,Ga)(Sb,Bi)4元微粒子試料を作製し過冷度と結晶成長の関係解明を目指した。その結果、3d遷移金属を微量添加することにより微粒子表面は高過冷度で無容器凝固するが、微粒子内部は単結晶に酷似する特異な微細構造を示すことが認められた。また、4元微粒子試料は(In,Ga)Sb結晶粒が初晶として晶出する従来報告のない意義ある研究成果が得られたものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時に提案・計画した通り、申請2年目となる平成25年度は内外共に全くない自由落下部2.5mのショートドロップチューブ装置を用いて、初年度に続き、次世代高効率太陽電池Si微粒子とIII-V族化合物半導体単結晶微粒子創製に対する本新たなプロセスの有効性と実験条件を明確化させ、3か年の実施期間における本研究の目的遂行を目指した。 「研究実績の概要」で記したように、本研究は2つの課題を遂行する研究となるが、球状Si微粒子生成実験においては、高純度純Siに3d遷移金属を微量添加することにより、電磁浮遊プロセス技術の基盤技術は明確化でき、併せて純Siとは全く異なる高過冷度発現に依存した微粒子生成が認められたが、Siは3d遷移金属と化合物を形成し、粒界部及び表面に微細な突起を形成する特異な結果が明確化でき、これはスピントロニクス分野の代表的材料となる、新たな磁性半導体創出のプロセス技術とも密接に関連する意義ある成果と考える。 また、III-V族化合物半導体融液からの過冷度と結晶成長に関する報告は内外共に殆どないが、初年度に得られた2元組成に加え、今年度重点的に実施した3d遷移金属添加3元及び(In,Ga)(Sb,Bi)4元微粒子創製実験によって、単結晶生成に対する3d遷移金属の微量添加効果が示され、併せてバンドギャップ制御を踏まえた多元系III-V族微粒子創製に対する本プロセスの有効性とIII-V族混晶半導体微粒子創製及び過冷度と結晶成長に関する内外共に報告のない新たな意義ある成果が提示された。従って、本申請研究2年次の目的は十分達成されたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度及び今年度の成果を踏まえ、最終年度となる次年度においては以下の項目を中心に実験と解析を行い本申請研究課題を遂行する。 1.次世代高効率太陽電池Si創製実験 初年度及び本年度の研究成果から、Siに微量の3d遷移金属元素Fe,Co,Ni,Mnを添加することにより過冷度は著しく増大し、粒界部と微粒子表面にシリサイドを形成する結果が認められた。また、p型及びn型半導体Siの過冷度と結晶成長機構解明を目的に実施したAl及びSb添加微粒子生成実験結果を踏まえ、①微量3d遷移金属添加磁性半導体Si微粒子創製実験、②希土類-遷移金属添加Si微粒子試料の過冷度と結晶成長解析(Nd-Fe及びNd-Fe-B添加磁気異方性半導体Si微粒子試料創製実験),③n型及びp型半導体Si微粒子創製と過冷度と結晶成長の解析,④B及びPドープSiを用いた直接p-n接合化新プロセス技術の検証,⑤Fe,Co,Ni,Mn,Al,Sb,B添加Si微粒子試料のEBSDを用いた結晶方位解析と半導体特性の解析等を中心に実験と解析を行い、本申請研究の目的遂行を目指す。 2.III-V族化合物半導体単結晶微粒子創製実験 初年度及び本年度に得られた成果から、特にInSb単結晶2元微粒子生成に対する本プロセスの有効性は明確化でき、併せて,微量3d遷移金属元素の添加により試料表面は微細なデンドライド生成を示すが、特に,Co微量添加微粒子試料内部は、ほぼ単結晶生成を示す特異な組織生成を示す成果を得ている。そこで次年度においては、①3d遷移金属添加III-V族半導体微粒子試料の過冷度と微細構造の関係解明,②バンドギャップ制御を目的としたIII-V族混晶半導体微粒子創製実験,③Si添加III-V族半導体の過冷度と結晶成長機構解明等を行っていく。なお、各微粒子試料に対し、局所構造解析,電気抵抗測定,XPS及びラマン分光測定等を行うことも研究計画とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、ショートドロップチューブプロセスを用いたFe,Ni,Co,Mn,Al,Sb添加Si微粒子試料の作製が当初計画していた以上に順調に遂行された。また、III-V族2元,3元及び4元微粒子作製に対する本プロセスの基盤技術確立も予定以上に順調に進んだことが、使用経費に差額が生じた理由となる。また、次年度は本申請研究の最終年度となるため、過去2年間で得られた多くの成果を踏まえ、申請者独自の視点に基づく広範囲な研究実施を予定している。さらに、次年度においては、本研究で得られた意義ある成果を学会発表及び学術論文等で公表することも予定しているため、翌年度予算として繰り越し行った。 『今後の研究の推進方策』に記した通り、次年度においては、過去2年間で得られた成果を踏まえ、「次世代高効率球状太陽電池Si創製実験」及び「III-族化合物半導体単結晶微粒子創製実験」2課題いずれにおいても、申請者独自の視点に基づく多くの実験と解析を行い本申請研究課題の完全目的遂行を計画している。p型及びn型Siの過冷度と結晶成長機構解明,ドロップチューブを用いた直接p-n接合化新プロセス技術の検証,バンドギャップ制御を目的としたIII-V族混晶半導体微粒子創製実験を行い、さらに、微小部X線を用いた局所構造解析や微粒子表面と内部の電気抵抗測定とXPS,ラマン分光測定による微量添加元素分析を行うことが次年度においては不可欠となる。また、本研究で得られた成果を学会等で積極的に公表することを予定しているため、次年度用予算としての使用を計画している。
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