研究課題/領域番号 |
24560924
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金指 正言 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10467764)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 二酸化炭素分離 / ゾル-ゲル法 / シリカネットワーク / 分子ふるい / アモルファス |
研究概要 |
初年度は,これまでにゾル調製実績のある“bridged”アルコキシドを用いたポリマーゾル調製条件の最適化について検討した。Si-C-Siユニットを有するbis(triethoxysilyl)methane (BTESM:(tEO)3≡Si-CH2-Si≡(OEt)3)を中心にゾル-ゲル法によりポリマーゾルを調製する手法を加水分解・重縮合反応条件(酸濃度,酸触媒種,アルコキシド濃度,重縮合時間,反応温度等を詳細に検討した。ゾル反応性は,加水分解時の水モル比により大きく異なることが明らかになった。 上記で調製したゾルを用い,焼成温度が膜透過特性に及ぼす影響について検討した。BTESM膜の平均細孔径は,焼成温度に依存しないことが明らかになり,200℃程度の低温製膜が可能であることが明らかになった。一方,600℃で焼成することでSi原子間のCH2基が分解してネットワークが緻密になることが明らかになり,水素/窒素透過率比100を示した。 環状アルコキシドを用いたポリマーゾル調製条件については,これまでの珪酸エチル(TEOS)を用いたゾル調製のデータを基に,加水分解・縮重合反応条件を詳細に検討した。Si4員環かご型構造を有する,polyhedral oligomeric silsesquioxane(POSS)をシリカ前駆体として用い分離膜を製膜した。200℃における透過率の分子径依存性を評価した結果,焼成温度により平均細孔径が大きく異なり,550℃で焼成することで二酸化炭素/メタン分離に有効な平均細孔径を有する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,これまでにゾル調製実績のある“bridged”アルコキシドを用いたポリマーゾル調製条件の最適化について検討した。Si-C-Siユニットを有するbis(triethoxysilyl)methane (BTESM:(tEO)3≡Si-CH2-Si≡(OEt)3)を中心にゾル-ゲル法によりポリマーゾルを調製する手法を加水分解・重縮合反応条件(酸濃度,酸触媒種,アルコキシド濃度,重縮合時間,反応温度等を詳細に検討した。“bridged”アルコキシドを用いたゾル反応性は,加水分解時の水モル比により大きく異なることが明らかになり,ゾル調製の最適化が可能になった。 BTESMを用い,分離膜を製膜し焼成温度が膜透過特性に及ぼす影響について検討した。スペーサーとしてネットワークサイズ制御に用いる有機官能基が熱分解する温度以下で製膜すると,ネットワークサイズは焼成温度に依存しないことが明らかになった。一方,熱分解温度以上で製膜すると,ネットワークが緻密になることが明らかになり,焼成温度の設定が極めて重要であることを明らかにした。 環状アルコキシドを用いた分離膜の作製に関しては,Si4員環かご型構造を有する,polyhedral oligomeric silsesquioxane(POSS)をシリカ前駆体として用い分離膜を製膜した。200℃における透過率の分子径依存性を評価した結果,焼成温度により平均細孔径が大きく異なり,550℃で焼成することで二酸化炭素/メタン分離に有効な平均細孔径を有する可能性が示された。 以上のように研究計画を順調に遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
①“Bridged”アルコシドを用いたポリマーゾル調製条件の最適化,②環状アルコキシドを用いたポリマーゾル調製条件の確立,③製膜,④気体透過特性および耐熱,耐水蒸気性の評価,またそれらに付随する特性評価(TEM,XRD etc)は平成24年度に引き続き研究開発を継続するが,特に初年度研究計画に示した②環状アルコキシドを用いたシリカポリマーゾル調製条件の確立,および下記に示す研究計画⑤“Bridged”アルコキシドおよび環状アルコキシドを用いた金属ドープポリマーゾル調製条件の確立に重点を置く。さらに,平成25年度後期から平成26年にかけて,⑤により調製したゾルによる製膜を行う。研究計画⑤の環状アルコキシドを用いた金属ドープについては,前年度の研究計画②の環状アルコキシドポリマー調製条件の進捗状況により,適宜研究計画を変更する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
製膜法はこれまでに製膜実績のあるゾル-ゲル法を基本としているため,既存設備を転用可能なため設備費の申請はないが,アルミナ基材,製膜試薬(主にゾル調製試薬)などの消耗品は必要不可欠である。同様に気体透過特性の評価についても,既存の気体透過測定装置を用いるため設備費の申請はないが,試験ガス,配管材料などの消耗品は必要不可欠である。 無機分離膜に関する研究では,日本国内では化学工学会,日本膜学会,国際学会ではInternational Conference on Inorganic Membranes (ICIM)が主な情報収集,成果発表の場になっているため,これら学会に積極的に参加し,気体分離膜に関する情報収集を行ない,平成25年度以降は本研究で得られた研究成果を発表するため,旅費の申請を行なう予定である。これら学会とは別に,国内旅費には,連携研究者である東京理科大の郡司天博准教授と行なう年数回のミーティングも含まれている。
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