研究課題/領域番号 |
24560928
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
田中 一宏 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (30188289)
|
研究分担者 |
熊切 泉 山口大学, 理工学研究科, 助教 (20618805)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 光触媒水素製造 / 水素分離膜 |
研究概要 |
過去の研究で最も高い分離性を示し有望と思われるシリカ膜の作製を中心に研究を進めた。細孔径が150nmの市販の多孔質基材を入手し、その表面にチタニア微粒子をコーティングして表面改質を行った。得られた支持体の平均細孔径は15nmで、細孔径20nmを超える細孔はほとんど見られなかった。この支持体は当初の目標と同じレベルであった。そこで、この支持体にゾルゲル法を用いてシリカ層を形成させたが、水素分離性能を示すシリカ膜は得られなかった。ゾルの調製条件の検討が不十分と考えられる。この成果は化学工学会高松大会にて発表を行った。この多孔質基材は入手が容易ではなかったので、比較的入手が容易な細孔径1.3μmの多孔質基材を出発材料としてその表面改質を行った。具体的には、比較的粒径の大きなアルミナ微粒子をコーティングした後、チタニア微粒子をコーティングした。条件を検討した結果、平均細孔径を15nmに制御できたが、全ガス透過速度の20%が20nmよりも大きなサイズの細孔を透過していた。この支持体を用いて作製したシリカ膜も水素分離性能は示さなかった。シリカ膜の他に炭素膜と高密度架橋高分子膜も水素分離膜の候補と考えている。過去に行った実験では、細孔径150nmの支持体では高密度架橋高分子の薄膜を作製することができなかった。また、同じ支持体を用いた炭素膜の膜厚は1μmであった。より薄い膜を得るためには目標とする10nm程度の細孔でできた欠陥のない多孔質支持体が必要であり、多孔質基材の表面改質条件の探索を続けている。準備として、炭素膜および高密度架橋高分子の前駆体となる高分子の合成を行った。また、シミュレーション実験ではシリカネットワーク層の分子モデルの構築を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
シリカ膜、炭素膜、高密度架橋高分子膜のいずれも、機械的強度のある多孔質支持体上に形成させる必要がある。その多孔質支持体の表面は細孔径10nm以下の平坦なものにする必要があり、市販の多孔質基材の表面の改質が不可欠である。当初、入手できた細孔径150nmの多孔質基材では比較的簡単な表面改質により当初の目標と同じレベルの細孔径制御を達成できた。しかし、その基材の入手は容易ではなく、改質後のシリカ膜、炭素膜、高密度架橋高分子膜の作製の検討ができなかった。そこで、入手が容易な細孔径1.3μmの多孔質基材を出発基材として表面改質を行ったところ、20nmを超える細孔が欠陥として残った。このため、ガス分離性能を示すシリカ膜の作製に成功しなかった。当初はこの表面改質を初年度に達成する予定であったが2年目に持ち越しとなった。また、シミュレーションで用いるシリカネットワークの分子モデルは未完成であった。これらのことから(4)と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の早期に支持体の表面改質条件を確立する。シリカ膜の作製法としてCVD法とゾルゲル法の2通りを検討する予定であるが、特別な装置を必要としないゾルゲル法から検討を行う。ゾルゲル法により作製したシリカ膜の性能を評価して、その性能が目標を超える場合、特別な装置の組立が必要なCVD法は中止を検討する。また、表面を改質した支持体が得られるようになり次第、高密度架橋高分子膜の作製を行う。これに目処が付き次第、炭素膜へと展開する。シミュレーション実験は、予定通り、シリカネットワークの分子モデルを作製して、そのネットワーク内のガスの拡散係数を評価する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
化学蒸着(CVD)法により多孔質基材上にシリカ層を作製するための装置を組み立てるため、初年度にマスフローコントローラを計上していたが、多孔質基材の表面改質による細孔径制御と平滑化が目標レベルに到達しなかったため、CVD法の装置の作製を中断した。今後、多孔質基材の改質を進め、その表面へのシリカ層の形成をゾルゲル法で行う。また平行して、改質した多孔質基材表面に光架橋ポリイミド薄膜を作製する。そして、その結果を踏まえてCVD法によるシリカ膜の作製を行うかどうか検討する。 シミュレーション実験は、計算速度の速いワークステーションを購入し既存のソフトのライセンスを移設して実施する予定であったが、別途シミュレーションソフトの保守契約更新が必要であることがわかり、ワークステーションの新規購入はやめ、既存のコンピュータを用いて行う。ソフトの最新版を入手するには1年ごとの保守契約の更新が必要であり、CVD装置の作製を中止する場合はこちらに使用する予定である。
|