研究課題/領域番号 |
24560928
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
田中 一宏 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (30188289)
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研究分担者 |
熊切 泉 山口大学, 理工学研究科, 助教 (20618805)
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キーワード | 水素製造法 / 水素分離膜 / 光触媒 / ポリイミド膜 |
研究概要 |
本研究は室温付近で高い水素分離性能を示す分離膜の作製を検討している。本年度は、シリカ膜と高密度架橋高分子膜の作製、およびそれらに必要なセラミックス多孔質支持体上の中間層の作製条件の検討を行った。支持体上に形成させるシリカ層は10nm未満、高密度架橋膜は100nm未満にする必要があるが、入手できた多孔質支持体の細孔径は1.3μmであり、その表面に直接、薄層を形成させることはできない。中間層は、この薄層の形成に必要な、細孔径のより小さい滑らかな表面を持つ層のことである。シリカ膜は10nm以下の薄層を形成させることができたが、水素分離性を得ることができなかった。電子顕微鏡で観察された薄層の欠陥とナノパームポロメトリーにより得られた中間層の細孔径分布から、アルミナ多孔質支持体の表面の制御が不十分であると考えられる。高密度架橋高分子膜も1.3μmの支持体では分離性のある膜を得ることはできなかったが、過去に細孔径150nmの支持体上に作製を検討した分離膜の分離層を削り落として再利用した結果、有効膜厚2.5μmの膜を作製することができた。また、中間層を粒径の異なる2種類の微粒子を用いて作製することで、単一種類の微粒子で作製した中間層よりも細孔径を小さくすることが可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
中間層の細孔径と表面の滑らかさが、その上に薄層を作製することで得られるシリカ膜と高密度架橋高分子膜の分離性能を決定的に左右することに当初は思い至らなかった。細孔径の小さな支持体でも、そのままでは欠陥の無いシリカ薄層を形成させることができなかった。そのため、計画にはなかった中間層の作製条件の検討に手間取り、計画通りに進まなかった。分子モデルの検討も不十分であった。このことから、(4)であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の初年度に、150nmの支持体に微粒子を塗布することで細孔径が10nmの中間層を作製することに成功している。最近、同じ細孔径を持つ支持体の入手が可能となったため、次年度ではこの支持体を中心に検討を進める。細孔径の制御は初年度の手法により可能と考えられる。しかし、表面の滑らかさを評価する手段が今のところ電子顕微鏡しかなく、容易ではない。電子顕微鏡観察は破壊検査であり、また、観察には時間がかかるため、他の評価法を検討し、欠陥の無い薄層の作製のキーポイントとなる表面の滑らかさの制御に道筋をつける。なお、シリカ膜の作製法として当初はCVD法とゾルゲル法の両方を検討することにしていたが、CVD法を実施するためには複数台のマスフローコントローラや電気炉などが必要であること、耐熱性シールの制約から50mmのシリカ膜を作製するために6倍の長さの300mmの支持体が必要であることから、本研究でCVD法を検討することは困難であると判断し、次年度では検討しないことにする。そして、当初の通り、次年度は炭素膜の作製も検討する。炭素膜は高分子複合膜の焼成により作製するので、これまでに高密度架橋高分子膜の作製で得られたノウハウを生かしてある程度の性能の炭素膜を作製できるものと考えている。シリカ膜の分子シミュレーションは文献に多数報告が出始めているので、本研究の計算機実験の対象を報告例の少ない高密度架橋高分子および炭素に変更する。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子動力学ソフトウェアの保守契約を本年度の計画に入れ忘れたため執行ができず、次年度で執行するため相当額を残した。 準備ができ次第、なるべく早い時期に保守契約を行い最新のソフトウェアにより計算機実験を行う。
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