色素増感太陽電池(DSSC)の電極に用いるチタニア粒子の集積薄膜の構造とDSSCの光電変換効率との関係を検討すると共に,適切な集積薄膜作製条件・方法を見出すことを目的とした。 ドクターブレード法で,市販の球状チタニア粒子のみの試料,市販の針状チタニア粒子のみの試料,あるいは市販の球状チタニア粒子と自ら調製したチタニアナノワイヤー粒子を混合した試料を用い,チタニア粒子集積薄膜の空隙率とDSSCの光電変換効率の関係を調べた。球状粒子集積薄膜では,集積薄膜空隙率が52%の時,7.8%と最も高い光電変換効率が得られた。市販の針状粒子のみの試料では,集積薄膜空隙率を65%まで大きくした方がよく,8.9%の光電変換効率が得られた。両者を比較したところ,最大の光電変換効率を与える空隙率でヨウ素イオンの拡散係数が等しくなり,ヨウ素イオンの拡散係数に着目した空隙構造の制御が必要であることが明らかになった。なお,針状粒子の光電変換効率が球状粒子より高いのは,色素吸着量の相違によると推定される。また市販の球状粒子と自作のチタニアナノワイヤー粒子との混合試料では,後者を25%混合した場合が8.9%と最も高い光電変換効率を得ることができた。この場合の空隙率は粒状粒子のみの場合と同じ52%であり,光電変換効率の向上は,1次元チタニア材料中の電子移動特性の向上によるものと考えられる。 一方,電気泳動堆積法で作製した粒子集積薄膜は,ドクターブレード法で作製する場合より,遙かに均質性が高く,膜厚を容易に制御でき,さらにその再現性にも優れていることが判った。電気泳動堆積法の集積速度の予測式を確立するために,試料の導電率,分散粒子の泳動速度,粒子径を測定し,それらの影響を検討した。その結果,集積速度に最も影響を与える因子は分散粒子径であることが判明した。
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