研究実績の概要 |
細孔表面をチオール基等で表面修飾した単分散球状メソポーラス粒子を用いて、水溶液中のAg(I), Cd(II)およびPb(II)等の金属イオンの吸着過程をバッチ法により測定した。その結果、吸着過程が擬二次モデルで相関できた。この擬二次モデルの速度パラメータの値が、メソポーラスシリカ粒子内の金属イオンの見かけの拡散係数で相関できることを、初めて提案した。その結果、Ag(I)系で算出された拡散係数の値は、メソポーラスシリカ粒子内の金属イオンの負荷割合と相関できることを示した。この情報はメソポーラスシリカ粒子の分離場を最適に設計する一つの指針を与える。また、他の金属イオンではチオール基よりもシリカ表面の水酸基との相互作用が重要であるという結果を得た。また、市販の球状キレート樹脂による重金属イオンの吸着速度過程も同様に擬二次モデルで相関できた。この系では見かけの拡散係数の値が球状メソポーラスシリカ粒子系での値よりも3桁位大きな値が得られた。この系では拡散場の細孔径が大きいためである。 また、球状キレート樹脂をカラムに充填して破過曲線を測定した。破過曲線を表現する基礎方程式を用い、吸着速度過程を表す項として、従来の線形推進力近似と本研究で提案した擬二次吸着モデル式を用いて破過曲線を算出し、実験結果と比較した結果、擬二次吸着モデルで計算した破過曲線で実測値を相関する事が出来た。この方法で、球状メソポーラスシリカ粒子による破過曲線を測定しようとしたが、粒子径が小さく圧力損失がポンプの性能以上に大きく、今後は造粒法を開発してこの系での破過曲線を算出したい。更に二成分系での破過曲線で、一つの成分のカラム出口濃度が入口濃度よりも大きくなる「Overshoot現象」が観察された。これらの現象の定量化は不十分であるので、今後擬二次モデルを用いた破過曲線を用いて詳細に検討したい。
|