研究課題/領域番号 |
24560935
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久保 正樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50323069)
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キーワード | 超音波 / ラジカル / 重合 / 分子量 / 分散度 / N-イソプロピルアクリルアミド |
研究概要 |
本研究では,超音波照射下におけるラジカル重合法という新規なポリマー合成法を利用して,超音波照射条件の精緻な制御によって分子量分布の狭いポリマーを獲得するプロセスを構築し,環境温度の変化に対して鋭い応答性を示す感温性ポリマーを設計・作製する。具体的には,感温性ポリマーであるポリN-イソプロピルアクリルアミドを対象物質として,分子量分布の広さの指標である分散度を1.5以下に保持しつつ,分子量を目的の値に制御することのできるポリマー合成プロセスを確立することで,鋭い感温性を示すポリマーを作製する。 平成25年度は,はじめに,合成したポリマーの感温性を評価した。前年度の結果から,基本条件として溶媒である水とエタノールの割合を70vol%:30vol%とし,窒素雰囲気下で超音波を照射した。そして,得られたポリマー溶液から溶媒を乾燥除去し,ポリマーを水に再溶解させた後,その水溶液を所定温度にすることで,生成ポリマーの温度応答性を評価した。その結果,超音波照射を利用する本研究の手法においても,感温性を有するポリマーを合成できることが分かった。また,分子量分布の広い市販のポリマーに比べて,若干ではあるが温度応答性が急峻,すなわちシャープな感熱性を示すことが分かった。次に,超音波強度を変更する実験を,より扱いやすいモデルポリマーで検討した。その結果,反応開始時に超音波強度を強くし,途中から弱くすることで,分子量分布が狭いままで分子量を制御できることが分かった。更に,これまでの知見から,超音波強度,反応温度,溶媒組成と重合速度,ポリマー分解速度との相関を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度当初の計画では,2)生成ポリマーの分子量,分散度と感温性との関係の解明,3)マルチステップ超音波照射法の有効性の検討,4)超音波照射によるポリマー合成の機構の検討,を行うこととした。このうち,2)については一部を24年度に行う予定であり,24年度の段階では遅れていたが,25年度中に実施・検討を行うことができた。一方,3)については,25年度中に行うことができた。さらに,4)については,既に24年度に着手し,25年度中に実施することができた。 以上のように,全体として概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下に示す研究を推進する方策である。 <5.超音波照射条件最適化のためのポリマー合成速度論モデルの構築>超音波強度の変更方法は操作変数が多く,組み合わせは多岐にわたる。このため,実験を主とする検討は煩雑である。そこで,種々の操作因子の影響を考慮したポリマー生成速度論モデルを構築し,それを用いたシミュレーションによって最適操作条件を明らかにする。 <6.分子量、分散度設計プロセスの構築>これまでに獲得した実験的事実ならびに速度論モデルを用いたシミュレーションを駆使して,分子量ならびに分散度の制御を試みる。さらに,合成したポリマーの温度応答性を測定・評価し、シャープな感温性を有するポリマーを獲得することのできる操作条件を探索する手法を確立する。以上の実験的,理論的結果をベースにして,シャープな感温性を有するポリマーを合成するプロセスの構築を行う。
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