研究課題/領域番号 |
24560936
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
関 宏也 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (70422524)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プロセス制御 / バッチプロセス / 状態推定 / 最適化 / 工業晶析 |
研究概要 |
初年度は,高機能化学品生産における分離・精製手法として重要性を増しているバッチ冷却晶析プロセスの結晶粒径分布の制御を対象として,フィードの濃度,種結晶量などの運転初期条件に不確実性が存在する中で,早期に運転状態を推定し,冷却プロファイルを適宜変更し,製品結晶粒径分布を向上させる制御手法について,計算機シミュレーションを用いた研究を行った. まず,製品結晶の粒径分布は,主に,バッチ開始直後の過飽和度の影響を受けることを見出し,初期過飽和度をキーとして,冷却プロファイルを修正する制御系を考案した.つぎに,初期過飽和度を推定することを目的として,濁度計を用いて2次モーメントが測定可能であることを想定し,バッチ開始後数分間のセンサデータから,PLSなどの統計的手法を用いた状態推定手法を開発した.さらに,これら2つを組み合わせ,状態推定により初期過飽和度を推定し,過飽和度推定値に基づいて冷却プロファイルを修正するフィードバック制御系を設計し,様々な外乱存在する実生産環境を模擬したモンテカルロ・シミュレーションにより,設計した制御系の評価を行い,ある程度の有効性を確認した.ただし,バッチ中に,昇温操作を行わない場合,効果は限定的であることがわかった. また,バッチ中の昇温による結晶の溶解が,とくに結晶成長・溶解に粒径依存性がある場合,粒径分布の向上に極めて有効であることを見出し,最適化計算により最適冷却プロファイルを見出した.得られたプロファイルは,可能な限り,昇温・冷却を繰り返す,従来知られていた,上に凸の冷却プロファイルとは大きく異なるものとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画は,状態推定・シナリオ判別までとしていたが,シナリオベースの制御系の設計・評価まで,ひと通りの手順を検討できた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,バッチ冷却晶析プロセスの製品結晶粒径分布制御を対象に研究を行う.昇温操作を含めた場合について,シナリオベースの制御系を設計し,状態推定手法を含めた制御システムの性能の評価・改善を行う. なお,昇温操作による結晶の溶解を考慮する場合,シミュレーション計算の負荷が飛躍的に増大するため,GPUを用いた並列計算環境を導入するなど,計算機の能力増強を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
参加する予定であった国際学会を次年度4月開催の学会に変更したことにより,未使用研究費が生じた.この未使用分は学会参加費用としての使用が確定している. また,計算機環境(ハードウエア,ソフトウエア)の整備に関して,GPUを用いるなど初めての試みが多く,評価を慎重に行ったため,研究費の使用に若干の遅れが生じた.次年度はこの評価結果をもとに,並列計算環境の増強のために研究費を使用する.また,予め計画していた国際学会での研究発表・情報収集のために予算を使用する.
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