研究課題/領域番号 |
24560938
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
飛田 英孝 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30237101)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重合プロセス / ナノ粒子材料 / 高分子反応工学 |
研究概要 |
H24年度は、種々の可逆的不活性化ラジカル重合の内、RAFT重合を中心に検討を行った。RAFT重合の重合機構については、2つのタイプのモデルが提案されており、過去10年以上にわたり論争が繰り広げられてきた。我々は、独自に構築してきた重合速度理論に基づいて、バルク重合では識別困難な2つのモデルがミニエマルション重合を用いれば、一方のモデル(ITモデル)では顕著な重合加速を生じるのに対し、もう一方のモデル(SFモデル)ではまったく重合加速を生じないという特徴的な重合挙動により、両者を容易に識別できることを見いだした。この識別方法を実験的にも適用し、これまでに2種のRAFT剤について、ITモデルが妥当であることを見いだした。(これを報告した1報目の論文は、2012年にMacromolecular Reaction Engineering誌において、最もアクセスされた論文の第4位となる大きな反響があった。)さらに、理論を精緻化することにより、RAFT重合において、その液滴径以下で顕著な重合加速を生じる液滴径、減速を生じる液滴径を定式化し、ITモデルでは広い液滴径範囲で加速の窓が存在するのに対し、SFモデルではこれまでに検討したいかなるパラメータの組合せでも加速の窓が生じないことを確認した。また、SFモデルで決定されたパラメータの組合せで、加速の窓が存在するか否かを簡便に判別できる式も提案した。本研究成果については、近々、学術雑誌に投稿予定である。 ITモデルが適用できるRAFT重合系では、ミニエマルション重合を用いることにより、大きく生産性を向上させることができる。本知見は、RAFT重合ポリマーの工業化に向けて、重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去10年以上にわたって論争が繰り広げられてきたRAFT重合のメカニズムをミニエマルション重合という微小な反応場の特性を生かして判別する方法を独自の理論に基づいて提案し、さらに実験的にも検証できたことは大きな成果であると考える。これは、可逆的不活性化ラジカル重合を横断的に取り扱える重合速度式を開発してきた成果の一つといえるであろう。また、ミニエマルション重合において、顕著な重合加速を生じるのに必要な液滴径を算出できる式も提案できたことは、RAFTミニエマルション重合の工業化において重要な知見となる。当初の計画では、RAFT重合だけでなく、SFRPやATRP系に対しても検討を加える予定であったが、むしろ、初年度はRAFT重合系に絞ることにより大きな成果が挙げられたと考えており、全体としては、計画通りに進んでいると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
RAFTを始め、種々の可逆的不活性化ラジカル重合の単独重合を微小液滴内にて重合させた場合について、分子量分布と液滴径の関係を理論・実験を通じて解明し、プロセス設計のための反応工学理論を整備する。さらに、共重合反応に展開し、微小液滴内での重合における共重合体組成の分布、及び傾斜高分子、ブロック共重合体の特徴を明らかにし、その設計・制御理論を確立すべく、液滴径との関係について検討を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ソフトウエア・ライセンスの維持、及び、計算結果のビジュアル化支援ソフトの購入等に約50万円を支出する他、計算機関係消耗品に約20万円、実験用試薬に約20万円、実験用消耗品に約20万円、研究打合せ(国内)に約20万円、その他文房具類に約5万円の支出を予定している。
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