研究概要 |
RAFT重合においてRAFT剤濃度増大に伴う抑制効果を説明するモデルとして(1)中間体と成長ラジカルの停止反応が生ずるとするIT(Intermediate Termination)モデルと(2)中間体の開裂が遅いとするSF(Slow Fragmentation)モデルの2つのモデルがともに2001年に提案されて以来、過去10年以上にわたりどちらのモデルが妥当であるのかについて論争が続いてきた。モデル識別が困難である理由の一つは、バルク重合においてはどちらのモデルも同程度に実験結果を説明できることにある。本研究において、数百nm程度以下の微小液滴系内にて重合を行うミニエマルション重合を用いれば、液滴径減少に伴い重合速度が増大すればITモデル、増大しなければSFモデルというきわめて明快な形でモデル識別が行えることを理論及び実験を通じて提案してきた。 H25年度は、パラメータの組合せを大きく変化させてもSFモデルでは、ミニエマルション重合における重合速度の増大が生じないことを数値計算により確認するとともに、未知の反応系に対してSFモデルでは重合速度の増大が生じないことを容易に確認できる簡便な式を提案した。本検討結果を報告した論文[Macromol. Theory Simul., 22, 399-409 (2013)]は、学術雑誌の表紙で取り上げられた。 また、上記の理論に基づいて重合条件を設定したジチオール系RAFT剤を用いたスチレンのミニエマルション重合実験を行い、液滴径減少に伴い重合速度が増大することを確認し、本反応系に対してはITモデルが妥当であることを実証した。本検討結果を報告した論文[Macromol. Theory Simul., 23, 136-146 (2014)]も高く評価され、学術雑誌の表紙で取り上げられている。
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