H26年度は、前年度までに確立した理論を実験にて検証し、その妥当性と問題点を整理すると共に、モデルをさらに実際系に近づけるために必要な諸課題の整理を行った。RAFT系については、ミニエマルション重合実験を当研究室にて実施した。その結果、中間体との停止をともなうITモデルに対する理論予測通りの液滴径以下で、顕著な重合速度の増大が見られ、反応率-時間曲線は、定量的にも計算結果と良好に一致した。RAFT重合に対してITモデルが妥当であるとする結果は、最近報告されている電子スピン共鳴法によりラジカル検出結果ともよく一致しており、過去10年以上にわたって続いてきたRAFT重合メカニズムに関する論争にほぼ終止符が打たれたと考えている。 一方、RAFTミニエマルション重合系における分子量分布については、平均分子量の変化については理論予測とほぼ一致するのに対し、分布の広さについては反応が進行するにつれて理論予測からのずれが生ずることが示された。現在、液滴径の分布の影響を含めて検討を継続しているが、何らかの副反応が生じている可能性もある。また、モノマー濃度の揺らぎ効果に基づいて重合速度が減少するという理論予測については、実験の再現性が十分には得られない状況にある。現在、モノマーとしてスチレンを用いているが、より疎水性の高いモノマーが必要になるのではないかと考えている。 SRMP及びATRPについては、文献データより、定性的には理論予測通り、RAFT系とは逆に液滴径減少に伴い重合速度が減少するという挙動を確認することができた。
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