研究課題/領域番号 |
24560939
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
香田 忍 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10126857)
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研究分担者 |
安田 啓司 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80293645)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 反応プロセス / ソノプロセス / 超音波 / キャビテーション |
研究概要 |
本研究は,大口径の振動子を備えた20 kHz円筒型ソノリアクターを試作し,カロリメトリー,KI酸化法,高分子鎖の分解反応によりソノリアクターの化学的作用および物理的作用を定量的に評価することを目的とする。従来から用いられている低周波数用の高出力ホーン型の装置について同様の実験・評価を行い,試作した円筒型ソノリアクターとホーン型装置の違いを明らかにする。 24年度、振動子径50mmの20kHz大口径のリアクターを設計し試作した。反応器は、可視化が可能なガラス製と温度制御可能なステンレス製のリアクターを試作した。振動子にはランジェバン型を用いた。ランジェバン振動子の振動の節につばを取り付け振動の効率を高めた。化学的作用は、KI法とカロリメトリ法から求められる化学反応効率で評価した。物理的作用はポリエチレンオキサイドの切断に伴う粘度の減少度より評価した。化学反応効率は振動子への電気入力30W以上では一定値を示し、その値は従来のホーン型振動子を用いた反応器に比べて2~3倍向上した。一方、物理的作用は電気入力に対して単調に増加し、ホーン型に比べ20%低下した。 試作したソノリアクターについて、アルミホイルのエロージョンにより定在波の出現を確認した。さらにソノリアクター内の反応場について、ルミノール水溶液を用いて可視化した。液高さに対してソノケミカルルミネッセンスの出現挙動が変化するという、興味ある結果が得られた。ルミノール発光はセル内の定在波形成と関係づけられているが、液高さにより反応器内の音場が大きく影響を受けていることが示唆された。さらに、液高さの影響について詳細に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
振動子の固定方法を工夫することにより効率的ソノリアクターの開発が可能となり、従来の反応器を超える化学反応性能を有した。可視化用のガラス製反応器と温度制御可能なステンレス製反応器を開発した。 化学反応効率は従来のホーン型振動子を用いた反応器に比べて2~3倍向上した。 反応器内の可視化をルミノール水溶液により行ったところ、20kHz低周波における定在波を呈する超音波反応場の可視化に成功し、定在波の場所はアルミホイルのエロージョンによる結果と一致した。液高さにソノケミカルルミネッセンスの出現が変化するという、興味ある結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の進捗状況を考慮し,超音波の化学作用,物理的作用に対する液高さ(液量),液流れ,温度の影響をさらに詳細に調べ,大口径ソノリアクターの最適化を計る。 1.大口径ソノリアクターを使用し,カロリメトリ,KI酸化法により化学反応効率,ポリエチレンオキサイドの切断に伴う粘度の減少度による物理的作用に対する液高さ(液量),温度の影響を明らかにする。 2.ソノリアクターのさらなる効率化のために、攪拌により強制的に液流れを発生し,その影響を調べる。 3.繊維の染色に使用される代表的なアゾ染料を吸着させた布を浸した溶液に超音波を照射し,染料の脱着過程を吸光度測定より明らかにする。試作した装置と従来の500kHzのソノリアクターを用いる。 4.得られた成果を国内外の学会,論文等で公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として振動子、試薬、ガラス器具を購入する。また、経費の一部は、旅費として使用する計画である。
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