研究課題/領域番号 |
24560939
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
香田 忍 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10126857)
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研究分担者 |
安田 啓司 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80293645)
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キーワード | ソノケミストリー / ソノプロセス / 化学的作用 / 機械的作用 / 効率化 |
研究概要 |
本研究の目的は、低周波数で駆動する大口径の高効率ソノリアクターの開発と最適化を行うことである。これまで、直径50mmの振動子での振幅の節を固定した円筒型超音波反応器を試作し、その評価を行ってきた。以下、得られた成果を以下に示す。これらの研究成果の一部は、第22回ソノケミストリー討論会やAsia Oceania Sonochemistry Societyで発表した。 1. カロリメトリーより超音波強度,KI酸化法より得られた三ヨウ化物イオンの濃度、ポリエチレンオキサイド水溶液において得られた高分子鎖の切断速度定数から化学的作用および機械的作用(物理的作用)を定量的に評価した。また、既設のホーン型振動子を用いた実験結果と比較し、試作した装置では、物理的作用は1.5倍、化学的作用は約2倍向上した。 2. スケールアップを目指し、液量の影響を調べるため液高さを変化させ、1.で実施したものと同様の実験を行い、機械的作用は単純に液高さとともに減少したが、化学的作用には最適な液高さがあることが明らかとなった。さらに、液高さを変化させたときに、同時に音響インピーダンスを測定したところ、音響インピーダンスが最小となる値でソノケミカル効率が最大となることが明らかとなった。 3. ルミノール溶液を用い、ソノリアクター内の超音波場をソノケミカルルミネッセンスでの可視化した結果、20kHz域で安定な定在波を観測した。また、発光強度が液高さに影響を受けることも明らかとなった。この結果は、化学作用の増大が安定な定在波による活性気泡の増大に由来すると考えられる。 4. 実験装置の都合上500kHz駆動のソノリアクターで液流れの影響を調べた結果、300rpm程度の攪拌により化学的作用が約1.8倍増加することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで計画は予定順調に進展しており、大きな問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果を踏まえ、液量、液流れ、温度についてソノリアクターの最適化をおこなう。従来の装置に比べ、現在まで約4倍の化学作用を示した。さらにソノリアクターの反応効率を高めるため、酸化チタン微粒子の添加、UVの同時照射を行う。最終的に、低周波数用ソノリアクターを効率化および制御するための設計指針を与える。さらに、実用的な観点から、アゾ染料の分解反応を利用し、開発したソノリアクターの有効性について検証をおこなう。 1.超音波強度、液量、液流れ、温度をパラメターとし表面曲面法により実験条件の最適化を行う。試作したソノリアクターの効率を今後さらに高める工夫について分担者安田啓司(名古屋大学准教授)と協力しアルミナや酸化チタンなどの微粒子を反応系に添加し超音波キャビテーション効果を増大させ、超音波の化学的作用及び超音波の機械的作用を増大する方法について検討する。 2.装置の性能の最終的な評価として、環境汚染で問題となる難分解性アゾ染料であるローダミンB 100ppm程度の水溶液についての分解反応実験をおこなう。本実験は、これまでの実験および解析により得られた最も高い分解効率が得られる液量、超音波強度、温度の条件にて実験をおこなう。分解量は溶存するアゾ染料の吸収スペクトルの解析より評価する。 3.一定量のアゾ染料を吸着させた布を浸した溶液に超音波を照射し、アゾ染料の分解、脱着過程を吸光度測定より明らかにする。 4.以上より得られた成果を国内外の学会、論文等で公表し、低周波数高効率ソノリアクターの設計指針を与え、実用化における問題点について提言する。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度に大型装置を稼動するため、現有の設備改造を行うため、25年度の旅費、消耗品の支出を研究の推進に支障が出ない程度に抑えた。 振動子など消耗品と装置の改良に使用予定。また、経費の一部は、成果の公表のため、秋田でのソノケミストリー討論会、福岡での化学工学秋季大会へ出席するために使用予定。
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