研究課題/領域番号 |
24560945
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西山 覚 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00156126)
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研究分担者 |
市橋 祐一 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20362759)
熊谷 宜久 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (60437457)
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キーワード | バイオアルコール / 選択還元反応 / 耐水性固体酸塩基触媒 / 不飽和アルコール合成 / ジルコニウム / メソポーラスシリカ / イオン液体 / シランカップリング |
研究概要 |
含水状態の2級アルコールを還元試剤として,固体酸塩基触媒上で不飽和カルボニル化合物を選択的に還元し,バイオアルコールの利用を想定して水含有反応雰囲気にて不飽和アルコールの効率的生産プロセスの構築を検討した. 活性点であるZr酸化物超微粒子を担持したメソポーラスシリカ(MCM-41)を触媒として用いた.反応は,不飽和カルボニル化合物のシンナムアルデヒドの選択還元反応で,目的生成物は,アルデヒド基だけを還元した不飽和アルコールのシンナミルアルコールである.Zrを導入したMCM-41触媒のナノサイズ細孔内に疎水性のイオン液体を充填し,還元試剤である2-プロパノールに水を加え実験を行った.アルコール中の水分子を排除しつつ,還元反応(水素移行反応)を進行させた.平成25年度は,イオン液体の充填量を変化させた時に耐水性について検討した.反応中にイオン液体の一部が反応溶液内に溶出し,活性点であるZr(4+)カチオンが水分子に曝され,耐水性が失われることがわかった.イオン液体分子の溶出を抑制する目的で,イオン液体分子の末端にシランカップリング用の官能基(Si-O-Me)を導入したイオン液体を用いて多孔質細孔内表面の水酸基(Si-OH)と反応させイオン液体分子を固定化した.この触媒を用いることで,イオン液体分子のナノサイズ細孔からの溶出を抑制でき,水含有率5 wt%程度までは,水素移行反応の活性を維持し,耐水性が付与できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画である,メソ多孔体の細孔内に活性点を導入し,そこを疎水性のイオン液体で修飾・保護することで,水含有反応雰囲気中であっても固体酸塩基触媒が機能できるといったコンセプトに沿った結果が得られている.導入したイオン液体の細孔内での保持安定度が重要で,溶出が起こると保護機能が低下することもわかった.その改善策として,シランカップリングにより疎水性イオン液体分子をメソポーラスシリカ表面の水酸基と反応させ化学結合で固定化することで,反応中の溶出が極めて抑制できた.これにより耐水性が改善された.100 %の耐水性は得られていないが,順調に耐水性の改善方法が確立しつつあるので,本研究は,概ね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
これまでは,メソポーラスシリカを反応の場として使用してきたが,加えて更に多孔質体自体に疎水性を有する高表面積の活性炭を担体として用い,Zr酸化物超微粒子を導入し,同様な効果を検討する.活性炭は,熱処理などにより疎水性を制御できる.疎水性の評価,並びに細孔特性(表面積,細孔径分布など)との関係を検討する. 平成26年度は,本研究の最終年度であり,触媒材料の改良だけでなく,反応条件の最適化も含めて検討する.水分子による酸塩基点の被覆は,温度によって大きく変化するので,反応温度が通常の反応以上に重要な因子である.活性・選択性への影響も含め上記の活性炭触媒と並列して検討を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
2,633円を残して平成25年度の実験計画が終了したため,研究費を有効に活用する目的で,次年度に繰り越した. 平成26年度も引き続いて,耐水性酸塩基触媒の創成を目的として,触媒の合成および耐水性の評価を行うため,試薬の購入に活用する.
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