本研究課題では、①酸性質や構造をチューニングしたゼオライトをホスト空間として使用することで、金属クラスターのサイズ(核数)や電子状態をオーダーメードに調製する、②USYゼオライトの細孔中で形成した原子状およびクラスター状の金属によって触媒反応を実施し、これらの触媒の可能性を明らかにする、③多様な手法による構造解析により、形成メカニズムおよび酸点と金属との相互作用の本質を明らかにすることを目的として研究をおこなった。その結果、Pd/USY ゼオライトを空気中で熱処理して調製した触媒が、ブロモベンゼン誘導体をもちいた室温・空気中での鈴木カップリング反応に高い活性を示すことを見出した。反応後では微細な金属Pd とPdO が混在していた。一方、5回繰り返して反応をおこなったのちに空気中で熱処理し、ふたたび反応した試料ではクラスター状のPdO が観察された。したがって履歴によって活性種が異なることがわかった.また,第一原理計算により、金属PdはUSYゼオライトのソーダライトケージのサイトIIに存在することが示唆された。Pd以外の元素では、Rhホスフィン錯体とゼオライトを物理混合し、熱処理することで、ゼオライトの外表面に固定化することができた。この固定化錯体はスチレンの水素化反応に対して固定化前の錯体よりも10倍以上の活性を示すことを見出した。今後は、PdおよびRhで実現したゼオライトのイオン交換サイトとの反応による固定化の手法を生かし、均一系および不均一系、両者の特性を持つハイブリッド型触媒を創生し、研究を展開する予定である。
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