前年度までに、本課題で担体として用いる計画のメソポーラス有機シリカの調製(合成)そのもの、特にある程度まとまった量を確実に製造できる手法の開発にこそ価値があると私は確信した。 そこで、メソポーラス有機シリカの調製段階を分けてとらえて、各段階の反応から均質な粒子を確実に得るための条件探索を開始した。適切な知財確保の観点から詳細は省くが、調製条件を変えることにより、比較的均質な相から粒子生成が可能なことを実験的に確認できた。細孔の鋳型となる分子の分子構造を変えることにより、相の形成条件が大幅に変わること、特に、これまでほとんど着目されていないであろう現象を確認することに成功した。これらの取り組みと現象について、細孔材料を扱う複数の民間企業研究者に相談したところ、これらの領域は材料調製時のブラックボックスの部分が多く、学術的な研究対象として非常に興味深いとのコメントをいただいた。 そして、さまざまな条件下でのメソポーラス有機シリカの調製を試み、従来よりも空時収率(特に濃度)を高めて目的物を得るための目処をつけた。 一方、メソポーラス有機シリカに担持するためのルテニウム新錯体触媒の合成を進めた。その結果、酸素系多座配位子を有する錯体(イリジウム系を含む)でニトリルの水和反応が、水の沸点以下の100℃以下で進行することを見い出した。この成果については、PacifiChem2015での発表を申し込んだ。並行してルテニウム系触媒による中世条件下でのベックマン転位反応にも取り組んだ。 以上、3年間に渡り、実験担当学生はゼロだった。
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