研究課題/領域番号 |
24560948
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
八尋 秀典 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (90200568)
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研究分担者 |
山口 修平 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (50397494)
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キーワード | ペロブスカイト酸化物 / 配位高分子前駆体 / 形態制御 / 熱分解 / シアノシリル化反応 |
研究概要 |
本年度はシアノ錯体熱分解法(CN法),逆均一沈殿法(RHP法),高分子前駆体法(PP法)といった種々の調製法を用いてペロブスカイト型酸化物であるSmFeO3を調製し,液相反応であるカルボニル化合物のシアノシリル化反応に対する触媒活性について検討を行った.種々の方法で調製したSmFeO3の比表面積当りのシアノシリル化反応活性の序列はCN法>PP法>RHP法となった.CN法はシアノシリル化反応に対して有効な調製法であることがわかった.各調製法におけるSmFeO3の結晶子径を比較すると,40 nm (CN法) > 37 nm (PP法) > 34 nm (RHP法)となり,CN法が最も結晶成長が進んでいた.シアノシリル化反応活性との比較から,ペロブスカイト型構造を形成する結晶成長が,触媒活性を向上させた原因であると推測している. また,種々のAサイト金属イオン(Ln = La, Pr, Sm, Gd, Dy)を用いてCN法で調製したペロブスカイト型酸化物LnFeO3のカルボニル化合物のシアノシリル化反応に対する触媒活性について検討を行った.LnFeO3の比表面積当りのシアノシリル化反応活性を比較したところ,Aサイトランタノイド種のイオン半径が小さくなるにつれて触媒活性が高くなった.活性とXPS測定との比較から,表面酸素濃度が高くなるにつれて,比表面積当りのシアノシリル化活性が高くなる傾向を示した.カルボニル化合物のシアノシリル化反応の活性点はブレンステッド酸点であり,表面酸素濃度が増加すると,ブレンステッド酸量が増加することが報告されている.従って,本系では表面酸素濃度が増加し,活性点であるブレンステッド酸点が増加したことによりシアノシリル化反応に対する触媒活性が向上したと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の主な計画の「③アッセンブリタイプペロブスカイト型酸化物触媒特性の評価」に関して、液-固反応として,酸塩基反応であるシアノシリル化反応に対する種々の方法で調製したペロブスカイト型酸化物触媒のシアノシリル化反応活性評価を重点的に行った.3つの異なる触媒調製方法で調製したSmFeO3を用いたところ,シアノ錯体熱分解法で調製した触媒が最も表面積あたりの触媒活性が高いこと,Aサイトランタノイド金属種の異なるペロブスカイト型酸化物LnFeO3のシアノシリル化反応活性は,表面酸素濃度の変化に伴うブレンステッド酸点の量と関係があることを明らかにした.以上のように,本申請課題は,当初の目的通りに進展している.前々年度の研究方針である「①多核シアノ錯体などの前駆体の合成」と「②シアノ錯体の熱分解によるアッセンブリタイプペロブスカイト型酸化物の調製」について継続的しており,焼成雰囲気を制御したシアノ錯体の熱分解を検討したところ,窒素や二酸化炭素雰囲気下でシアノ錯体が分解する過程に生成する新しい相が確認できており,当初の目的通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究方針である「③アッセンブリタイプペロブスカイト型酸化物触媒特性の評価」を続行する.特に,ペロブスカイト型酸化物の結晶成長や表面酸素濃度が反応活性に影響を与えていることに着目して,さらに詳細に検討を行う.また,Diels-Alder反応などの酸塩基反応やアルコールの酸化反応などのシアノシリル化反応以外の反応系への応用について検討を行う.また,前々年度の研究方針である「①多核シアノ錯体などの前駆体の合成」と「②シアノ錯体の熱分解によるアッセンブリタイプペロブスカイト型酸化物の調製」についても継続して検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度当初は複数の基質を用いて反応を展開することを予定していたが,触媒のキャラクタリゼーションに関する研究を先行したために,結果的に試薬の購入費が残として残った.平成26年度に繰り越した予算で種々の反応基質を購入する予定である. 繰り越した予算は反応基質購入および反応に必要なガラス器具等を購入する予定である.また,定常的に必要な試薬,器具,旅費については平成26年度の当初予算で行う.
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