本研究では,シアノ錯体熱分解法(CN法)を用いて様々な焼成条件で調製したペロブスカイト型酸化物の物性評価を行った.CN法を用いて大気中で焼成して得られたペロブスカイト型酸化物SmFeO3の比表面積と焼成温度・焼成時間の関係について調査した.その結果,焼成温度の増加とともに,比表面積は低下した.さらに,焼成温度が同じときには,焼成時間の増加とともに比表面積は低下した.650 ℃,5 hの大気中で焼成して得られた単一相のSmFeO3で比表面積が最も大きくなった.AサイトがLaの場合もSmと同様な傾向を示した.このように本研究を通じて得られた結果として,CN法では焼成温度を低く,焼成時間を短くした方が,より比表面積の大きなペロブスカイト型酸化物が得られることを明らかにした. 次に,様々な雰囲気でシアノ錯体を焼成してペロブスカイト型酸化物を調製した.酸素を流通して焼成した場合,ペロブスカイト型酸化物に帰属されるXRDピークが認められ,LaFeO3の単一相の形成が確認された.空気,湿潤窒素,二酸化炭素雰囲気の場合,単一のペロブスカイト型酸化物は形成しなかった.また,焼成炉の温度を300 ℃に設定し,種々の酸素分圧下でシアノ錯体を焼成した試料のXRD測定を行った.酸素分圧が50 %以上で焼成した際,単一相のペロブスカイト型酸化物LaFeO3の形成が確認された.ペロブスカイト相が観測された試料において,より高い酸素分圧下で焼成した試料ほど,結晶子径は増加し,比表面積は小さくなった.このように本研究によって焼成時の酸素分圧は得られるペロブスカイト型酸化物の比表面積,形状(アッセンブリ性)に大きく影響することを明らかにした. 三か年の研究でCN法によるペロブスカイト型酸化物最適形成条件が明らかとなり,当初の目標が達成できた.
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