研究概要 |
平成24年度は、可視光照射下において水の完全分解を達成するための光触媒の研究を行った。主に対象とした物質はTa系ペロブスカイト構造を有する遷移金属オキシナイトライドである。一般式はATaOxNy(A=La,Ca,Sr,Ba, X+Y=3)で表され、BaTaO2NやLaTaON2という組成の化合物が挙げられる。これらの物質はバンドギャップが2 eV程度であり、この物質を用いて水分解が実現できれば、利用可能な波長領域がこれまでよりさらに100 nm程度延びる。このLaTaON2という化合物は単味では水分解反応は進行しない。本研究での主な改善的なアプローチは異元素導入による物性変調と助触媒との組み合わせによる高機能化である。異元素導入による高活性化の手法として検討したのはMgのドーピングによる高活性化である。MgはTaとイオン半径が近く、Ta5+サイトを同型置換することができる。Ta5+サイトの一部をMg2+で置換すると、カチオン成分の電荷の差を補償するために、N3-がO2-に一部置き換わりLaTa1-xMgxO2+3xN1-3xの一般組成で表される一連の化合物を得ることができた。特にxが1/3のときに、高活性であった。さらにRh-Cr複合酸化物を担持することにより、可視光照射下で水素と酸素が同時に生成することが確認できた。遷移金属をベースとしたオキシナイトライドでバンドギャップが2 eV程度のものを用いて可視光照射により水素と酸素の同時生成が進行したのは初めての例である。現時点では、水素と酸素に加え、窒素の生成も見られる。これは、触媒の分解が部分的に起こっているということであり、これを抑制することが、安定かつ高活性に水分解を進行させるために解決すべき課題となる。そこで、年度最後に新規助触媒を発見し、水の酸化を促進し、水の可視光分解が定常的かつ安定に進行することに成功した。
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