研究課題/領域番号 |
24560953
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
高田 剛 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, NIMS特別研究員 (80334499)
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キーワード | 光触媒 / 水分解 / 可視光 / オキシナイトライド / 逆反応 / 助触媒 / ペルオキソ錯体 / コアシェル型光触媒 |
研究概要 |
本研究課題では、遷移金属酸窒化物をベースとし、可視光照射下において水の完全分解を達成するための研究を行った。前年度の研究から、LaTaON2という組成の化合物に対象を絞って検討した。この物質はバンドギャップが2 eV程度であり、この物質を用いて水分解が実現できれば、利用可能な波長領域がこれまでよりさらに100 nm程度延びる。このLaTaON2という化合物は単味では水分解反応は進行しない。本研究での主な改善事項は異元素導入による物性変調と助触媒との組み合わせによる高機能化である。異元素導入による高活性化の手法として検討したのはMgのドーピングによる高活性化である。MgはTaとイオン半径が近く、Ta5+サイトを同型置換することができる。Ta5+サイトの一部をMg2+で置換すると、カチオン成分の電荷の差を補償するために、N3-がO2-に一部置き換わりLaTa1-xMgxO2+3xN1-3xの一般組成で表される一連の化合物を得ることができた。xが1/3の化合物に、Rh-Cr複合酸化物を担持することにより、可視光照射下で水素と酸素が同時に生成することが確認できた。遷移金属をベースとしたオキシナイトライドでバンドギャップが2 eV程度のものを用いて可視光照射により水素と酸素の同時生成が進行したのは初めての例である。現時点では、水素と酸素に加え、窒素の生成も見られる。これは、触媒の分解が部分的に起こっているということであり、これを抑制することが、安定かつ高活性に水分解を進行させるために解決すべき課題となる。そこで、窒素生成を抑制する新規の表面修飾法を開発した。光触媒粒子の表面全体をTiO2などのアモルファス酸化物で被覆することにより、水素と酸素が2:1の比率で定常的に進行し、窒素の生成もほぼ完全に抑制できた。この材料系を詳細に検討し高活性化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バンドギャップが小さい化合物において可視光で水分解を行うことは、最も困難であり、挑戦的な課題である。当研究者は、当初の予定より難易度の高い課題を設定し、それを初年度の研究機関の最後で、それを解決する段階まで進展させた。新材料開発と新規修飾法の開発でバンドギャップが2eV程度の化合物で水の可視光分解が達成できた。そのためこの材料の高活性化と新規修飾法の詳細を中心とした多くの検討可能な事項が出てきた。よって充実した成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、本研究分野での推進を拒んでいたことはバンドギャップが2eV程度のもので水の分解反応が進行せず、またそのための方法論がわかっていなかったことである。25年度の研究で、これをブレークするための新しい手法を見出し、水分解を実現したため、今後の見通しがはっきりとしてきた。25年度の研究では新規に開発した表面修飾法とLaTaON2にMgを導入したLaMgxTa1-xO1+3xN2-3xについて詳しく検討し、高活性化を遂行できている。また、新規表面修飾法はLaMgxTa1-xO1+3xN2-3x以外の多くの遷移金属酸窒化物について適応可能であると期待できるため、多くの検討事項がでてきた。人手不足のため全てを網羅するのは困難であり、他機関からの協力を得ながら効率的に進めなければならない。
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