平成26年度は,GRP-tag融合タンパク質を結合させる新たな形状のカードラン担体の作製を試みた.まずはじめに,マイクロタイタープレートなどの多穴プレートのウェル底部に,厚さ1~5 mmまでのカードランディスクを形成させた.プレート底部に付着したカードランディスクの表面に,GRP-tag融合タンパク質を特異的に固定化することができた.カードランディスクは,アルブミンをはじめとする動物性タンパク質の非特異的吸着が非常に少ないことも明らかとなった.そのため,この形状のカードラン担体は,アルブミンなどを含む溶液中での薬剤探索用プロテインチップとしての使用できる可能性が示唆された.またカードランディスクを破壊することなくウェルから取り出すことにも成功した.取り出したカードランディスクに,GRP-tagとともに発現させた抗原タンパク質をカードランディスクに固定することで,安価な経口ワクチンとしての応用が期待される. 次にカードランをろ紙あるいは不織布に吸収させた膜型カードラン担体の作製を試みた.これらはより大きな表面積を必要とする工業用固定化酵素としての利用を視野に入れたものである.筒状容器へ丸めて格納した膜型カードラン担体に,組換えGRP-tag融合プロテアーゼを含む大腸菌抽出液を直接添加したところ,簡便かつ高純度に組換え酵素を膜表面に固定化することができた,膜型カードラン担体はすべて生分解性の素材で構成されていることから,工業分野に限らず,使用後の回収が難しい農業や環境分野における屋外での利用が期待される. 研究期間全体を通じて,概ね計画通りの進展が得られた.そこで今後はこれらの成果を医学,工学分野において実践的に利用する方法を検討していく予定である.
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