研究課題/領域番号 |
24560957
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
田中 孝明 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00217043)
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キーワード | 多孔質膜 / 生分解性材料 / 生体材料 / バイオプロセス / バイオセパレーション |
研究概要 |
本研究課題は界面活性剤(Tween 80など)を用いて生分解性プラスチック(ポリ乳酸など)を多孔質化することにより,分離膜および組織再生用足場材料の開発を目指す研究である。本年度は下記の検討を行った。 <1.ポリ乳酸製分離膜の安定性・分解特性> ポリ乳酸-1,4-ジオキサン-Tween 80-水-系溶液から非溶媒誘起相分離法を用いて作製したポリ乳酸製濾過膜の安定性・分解特性を検討した。卓上試験機を用いた引張試験により,応力-歪曲線を求め,主として破断伸びを用いて膜の力学的特性を評価した。室温25 ℃においては湿潤条件下で28日間経過後も,80%の破断伸びを保持していたが,コンポスト化に用いられる湿潤かつ温度60 ℃の条件においては7日間後には破断伸びは20%以下に低下した。この実験結果から,使用中には強度が保持できるが,目詰まり後にはコンポスト化処理により分解できることが明らかとなった。分離膜としての研究成果は平成25年度の結果と併せて,第9回世界化学工学会議にて研究発表を行った。 <2.細胞培養用足場材料への応用を目指した製膜条件の最適化> ポリ乳酸-1,4-ジオキサン-Tween 80-水-系溶液から非溶媒誘起相分離法を用いて作製したポリ乳酸製多孔質を用いて骨芽細胞様細胞の培養を行った。非対称膜の粗い面側に細胞を播種して培養を行ったところ,20日間にわたり,細胞が増殖することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリ乳酸膜の多孔質構造の制御と分離膜への応用については,各種界面活性剤の影響に加えてコンポスト化温度における分解挙動の傾向を明らかにし,第9回世界化学工学会議にて研究発表を行った。界面活性剤を用いて構造を制御したポリ乳酸製多孔質膜を用いて骨芽細胞様細胞の増殖を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
ポリ乳酸膜の多孔質構造の制御と応用をさらに進め,国際学会・学術雑誌での発表を目指す。ポリカプロラクトンなどの他の生分解性プラスチックも含めて多孔質構造の制御と分離膜・足場材料への応用研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の培養用薬品類の消費が見込みよりも少なかったために次年度使用額が生じた。 次年度に物品費や旅費に使用する計画である。
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