研究実績の概要 |
本研究課題は界面活性剤(Tween 80など)を用いて生分解性プラスチック(ポリ乳酸など)を多孔質化することにより,分離膜および組織再生用足場材料の開発を目指す研究である。本年度は下記の検討を行った。 <1.ポリ乳酸製分離膜の内部構造形成機構> ポリ乳酸-1,4-ジオキサン-Tween 80-系溶液から水を非溶媒とする非溶媒誘起相分離法を用いて作製したポリ乳酸製濾過膜の内部構造の形成機構について検討した。ポリ乳酸-1,4-ジオキサン-溶液の水の滴下による相分離は,高分子溶液の温度を変化させて得られた相図から推算した少ない水分濃度にて生じることが示された。本研究で用いたポリ乳酸は光学純度(98.5%)が高く,その高い結晶性により,局所的な水分濃度の上昇により生じたゲルが攪拌しても再溶解しないためであると考えられる。キャストしたポリ乳酸溶液の水槽への浸漬時にも同様な現象が生じており,ポリ乳酸多孔質膜の構造形成には熱力学的な相分離挙動に加えて速度論的な現象が関与していると考えられた。溶媒へのTween 80を添加効果も速度論的な現象が関与していることを示した。これらの分離膜としての研究成果はJournal of Membrane Science誌に発表した。 <2.細胞培養用足場材料への応用を目指した製膜条件の最適化> ポリ乳酸-1,4-ジオキサン-Tween 80-水-系溶液から非溶媒誘起相分離法を用いて作製したポリ乳酸製多孔質膜を用いた骨芽細胞様細胞の培養を継続して行っている。非対称膜の粗い面側に細胞を播種して培養を行うと,指状の多孔質構造を利用して膜内部にまで細胞が増殖可能なことを示し,The 10th International Congress on Membranes and Membrane Processesにて発表した。
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