研究実績の概要 |
本研究課題は界面活性剤(Tween 80など)を用いて生分解性プラスチック(ポリ乳酸など)を多孔質化することにより,分離膜および組織再生用足場材料の開発を目指す研究である。本年度は下記の検討を行った。 <1.ポリ乳酸製分離膜の濾過特性> ポリ乳酸-1,4-ジオキサン-Tween 80-系溶液から水を非溶媒とする非溶媒誘起相分離法を用いて作製したポリ乳酸製濾過膜の濾過特性について検討した。非対称性構造を有する多孔質膜の粗面側から濾過を行うとデプスフィルター(固液系深層濾過膜)として機能し,細菌懸濁液の濾過において高い濾過速度が得られた。ポリ乳酸製デプスフィルターはバイオマス由来かつ生分解性を有するため,今後バイオセパレーションで必要とされる環境に優しいシングルユースの高速濾過膜の候補となる。これらの結果は化学工学会第47回秋季大会にて発表した。化学工学会第47回秋季大会では分離プロセス部会関連のシンポジウム「SY-18. 粒子・流体系分離プロセスの最前線」にて展望講演G108を,バイオ部会関連のシンポジウム「SE-4. 次世代バイオ医薬品精製技術:シングルユーステクノロジー」で依頼講演T121を行った。 <2.細胞培養用足場材料への応用を目指した製膜条件の最適化> ポリ乳酸-1,4-ジオキサン-Tween 80-水-系溶液から非溶媒誘起相分離法を用いて作製したポリ乳酸製多孔質膜を用いた骨芽細胞様細胞の培養を継続して行った。非対称膜の粗い面側に細胞を播種して培養を行うと,指状の多孔質構造を利用して膜内部にまで細胞が増殖可能なことを示し,関連研究と併せて膜誌(日本膜学会誌)に発表した。
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