研究課題/領域番号 |
24560961
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大森 齊 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70116440)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 濾胞樹状細胞 / 胚中心 / 抗体 / B細胞 / 親和性成熟 / IL-34 / CSF-1受容体 / 骨髄系細胞 |
研究概要 |
抗原投与後に産生される抗体は,時間と共に抗原に対する親和性が増大する(親和性成熟と呼ばれる過程)。親和性成熟はB細胞の抗体遺伝子の髙頻度突然変異と、この結果髙親和性抗体を獲得したB細胞の選択的生存よって進行する。この過程には濾胞樹状細胞(follicular dendritic cell (FDC))が重要な役割を果たしているが、その分子レベルでの機構は不明な点が多い。我々はFDCの機能を詳細に解析するために、FDCの細胞株FL-Yを樹立した。FL-Yの性質を検討中、この細胞株が脾臓中の未分化なc-kit陽性前駆細胞から、CD11b陽性の新規な単球系細胞(FDMCと命名)を誘導することを発見した。FDMCはT細胞の増殖を抑制し、B細胞の増殖は強く促進するというこれまでのmyeloid系細胞にはない性質を有しており、胚中心におけるB細胞分化に重要な役割をもつことが示唆された。本研究では、まずFL-YによるFDMC誘導の機構を研究し、以下のような新規な知見を得た(論文投稿中)。 1) 単球系細胞の分化に関与することが知られているサイトカインとして、FL-YはCSF-1とIL-34の両方を産生していた。2) FDMCの前駆細胞はCSF-1レセプター(CSF-1R)を発現しており、FDMCの分化はCSF-1Rをブロックする抗体により完全に抑制された。3) 一方、CSF-1に対する中和抗体はFDMCの発生を阻害しなかったが、IL-34の中和抗体は強い阻害活性を示した。4) CSF-1とIL-34はCSF-1Rを共通のレセプターとして使用するので、これまでその生物活性は重複しているとされてきた。今回の我々の成果は、IL-34特異的にシグナルを伝える新たCSF-1R経路の存在を示すものであり、今後の展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
FL-Y由来のFDMC分化因子の解析の結果、これまでCSG-1と類似の活性をもつサイトカインとして 記載されているIL-34が特異的に活性を示し、CSF-1は関与しないシグナル経路があるという予想外の発見に 至った。これは、CSF-1R経路のこれまで考えられてきた複雑性をしめすものであり、この分野の研究に 新たな側面を提示し、新規な研究展開を触発するものとして重要である。
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今後の研究の推進方策 |
通常、IL-34とCSF-1の両方を等しく結合するCSF-1Rが、FDMC前駆細胞の場合には何故IL-34にしか応答しないのか、を分子レベルで明らかにする必要がある。このため、FL-Yに発現しているIL-34の存在形態を解析するとともに、前駆細胞側に出ているCSF-1Rが従来知られているCSF-1Rとどのように異なっているかについても 解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
免疫沈降法と質量分析を利用して、IL-34およびCSF-1Rと会合している可能性のある分子を同定する。
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