研究課題
我々の研究室において世界で初めてマウスfollicular dendritic cell(FDC)細胞株として樹立されたFL-Y細胞の機能解析の過程で、FL-Y細胞と脾臓中のc-kit陽性Lineage陰性の前駆細胞の共培養によって、新規なCD11b陽性の単球系細胞(FDMC)が誘導されることを見出し、FDMCの免疫学的機能と誘導メカニズムの解析を行ってきた。得られた結果の要点は以下の通りである。1) FDMCは活性化されたB細胞の増殖を強く促進し、胚中心B細胞特有のマーカーの発現を誘導した。このような特性を示す単球系細胞はこれまで報告されておらず、FDMCが胚中心反応の制御に関与することを示唆する。2) FL-Y細胞は単球系細胞の分化誘導に関与する可能性のあるサイトカインとして、CSF-1とIL-34の両方を発現していた。両サイトカインはCSF-1レセプター(CSF-1R)を介して作用することが知られており、c-kit陽性前駆細胞はCSF-1Rを発現していた。FL-Y細胞によるFDMCの誘導は、CSF-1Rをブロックする抗体によってFDMC誘導は完全に抑制された。しかし、興味あることに、CSF-1の中和抗体では抑制されず、IL-34の中和抗体では強く阻害された。また、FL-YにおけるIL-34の発現をRNAiによって抑制すると、FDMCの誘導は抑制されたが、CSF-1に対するshRNAは抑制効果を示さなかった。これらの結果は、FDMCの誘導はCSF-1Rを介するシグナルに依存して起こるが、このCSF-1RはIL-34にのみ特異的に応答することを示唆する。これまでIL-34選択的に応答するCSF-1Rは報告されておらず、この結果はCSF-1Rを介する新規なシグナル経路の存在を示すものである。以上の成果は、この分野の権威ある学術誌であるJournal of Leukocyte Biologyにhighlighted articleとして受理され、解説記事つきで出版された。
1: 当初の計画以上に進展している
当初、新規単球系細胞FDMCの生物学的機能は特に注目すべき点は無いよう思われたが、予想に反して、B細胞の増殖を促進するという従来の単球系細胞では報告されていない性質を持つことが分かった。また、増殖促進されたB細胞は胚中心にあるcentroblast特有のマーカーを獲得することから、胚中心B細胞の分化・増殖を制御する新しい細胞としてFDMCは注目すべき性質を持つという予想外の成果が得られた。また、FDMCの分化誘導にはCSF-1RとIL-34が必須であることを明らかにした。CSF-1Rは元来CSF-1のシグナルを伝える受容体として見出されたものであるが、近年第二のリガンドとしてIL-34が報告された。これまでCSF-1Rを使うどの細胞系においても、CSF-1とIL-34はほぼ同等に活性を示しているが、我々のFDMC誘導系はCSF-1Rに依存するにも拘わらず、IL-34のみが有効に作用した。このようなIL-34にだけ応答するCSF-1Rはこれまで報告がなく、CSF-1Rを介する新しいシグナル経路の発見、という予期しない成果につながった。
1)前年度までに明らかにしたIL-34選択的に反応する新規なCSF-1Rシグナル経路が、どのような分子機構でその特異性を発現するかを究明する。我々はこのIL-34特異性は、IL-34のこれまで報告のない存在様式(可溶性ではなく、細胞表面への結合型)によることを示唆する結果を得ており、この細胞結合型IL-34の構造を明らかにする。2)FDMCのin vivoにおける役割を明確にするために、IL-34KOマウスを用いて、抗体の親和性成熟におけるFDMCの役割、免疫後のFDMCの出現と挙動などを詳細に解析する。
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Journal of Leukocyte Biology
巻: 95 ページ: 19~31
10.1189/jlb.0613311