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2013 年度 実施状況報告書

抗体の親和性成熟を促進する新規骨髄系細胞の同定とそのB細胞活性化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24560961
研究機関岡山大学

研究代表者

大森 齊  岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70116440)

キーワード濾胞樹状細胞 / 単球系細胞 / 胚中心B細胞 / CSF-1受容体 / CSF-1 / IL-34 / シグナル伝達 / RNAi
研究概要

我々の研究室において世界で初めてマウスfollicular dendritic cell(FDC)細胞株として樹立されたFL-Y
細胞の機能解析の過程で、FL-Y細胞と脾臓中のc-kit陽性Lineage陰性の前駆細胞の共培養によって、新規なCD11b陽性の単球系細胞(FDMC)が誘導されることを見出し、FDMCの免疫学的機能と誘導メカニズムの解析を行ってきた。得られた結果の要点は以下の通りである。
1) FDMCは活性化されたB細胞の増殖を強く促進し、胚中心B細胞特有のマーカーの発現を誘導した。このような特性を示す単球系細胞はこれまで報告されておらず、FDMCが胚中心反応の制御に関与することを示唆する。
2) FL-Y細胞は単球系細胞の分化誘導に関与する可能性のあるサイトカインとして、CSF-1とIL-34の両方を発現していた。両サイトカインはCSF-1レセプター(CSF-1R)を介して作用することが知られており、c-kit陽性前駆細胞はCSF-1Rを発現していた。FL-Y細胞によるFDMCの誘導は、CSF-1Rをブロックする抗体によってFDMC誘導は完全に抑制された。しかし、興味あることに、CSF-1の中和抗体では抑制されず、IL-34の中和抗体では強く阻害された。また、FL-YにおけるIL-34の発現をRNAiによって抑制すると、FDMCの誘導は抑制されたが、CSF-1に対するshRNAは抑制効果を示さなかった。これらの結果は、FDMCの誘導はCSF-1Rを介するシグナルに依存して起こるが、このCSF-1RはIL-34にのみ特異的に応答することを示唆する。これまでIL-34選択的に応答するCSF-1Rは報告されておらず、この結果はCSF-1Rを介する新規なシグナル経路の存在を示すものである。
以上の成果は、この分野の権威ある学術誌であるJournal of Leukocyte Biologyにhighlighted articleとして受理され、解説記事つきで出版された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初、新規単球系細胞FDMCの生物学的機能は特に注目すべき点は無いよう思われたが、予想に反して、B細胞の増殖を促進するという従来の単球系細胞では報告されていない性質を持つことが分かった。また、増殖促進されたB細胞は胚中心にあるcentroblast特有のマーカーを獲得することから、胚中心B細胞の分化・増殖を制御する新しい細胞としてFDMCは注目すべき性質を持つという予想外の成果が得られた。
また、FDMCの分化誘導にはCSF-1RとIL-34が必須であることを明らかにした。CSF-1Rは元来CSF-1のシグナルを伝える受容体として見出されたものであるが、近年第二のリガンドとしてIL-34が報告された。これまで
CSF-1Rを使うどの細胞系においても、CSF-1とIL-34はほぼ同等に活性を示しているが、我々のFDMC誘導系は
CSF-1Rに依存するにも拘わらず、IL-34のみが有効に作用した。このようなIL-34にだけ応答するCSF-1Rはこれまで報告がなく、CSF-1Rを介する新しいシグナル経路の発見、という予期しない成果につながった。

今後の研究の推進方策

1)前年度までに明らかにしたIL-34選択的に反応する新規なCSF-1Rシグナル経路が、どのような分子機構でその特異性を発現するかを究明する。我々はこのIL-34特異性は、IL-34のこれまで報告のない存在様式(可溶性ではなく、細胞表面への結合型)によることを示唆する結果を得ており、この細胞結合型IL-34の構造を明らかにする。
2)FDMCのin vivoにおける役割を明確にするために、IL-34KOマウスを用いて、抗体の親和性成熟における
FDMCの役割、免疫後のFDMCの出現と挙動などを詳細に解析する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] CSF-1 receptor-mediated differentiation of a new type of monocytic cell with B cell-stimulating activity: its selective dependence on IL-34.2014

    • 著者名/発表者名
      Yamane, F., Nishikawa, Y., Matsui, K., Asakura, M., Iwasaki, E., Watanabe, K., Tanimoto, H., Sano, H., Fujiwara, Y., Stanley, E. R., Kanayama, N., Mabbott, N. A., Magari, M., Ohmori, H.
    • 雑誌名

      Journal of Leukocyte Biology

      巻: 95 ページ: 19~31

    • DOI

      10.1189/jlb.0613311

    • 査読あり
  • [学会発表] Follicular dendritic cells induce a new class of myeloid cells with unique B cell stimulating activities: specific dependence on IL-34/CSF-1R signaling pathway.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamane, F., Nishikawa, Y., Matsui, K., Asakura, M., Iwasaki, E., Watanabe, K., Tanimoto, H., Sano, H., Fujiwara, Y., Stanley, E. R., Kanayama, N., Mabbott, N. A., Magari, M., Ohmori, H.
    • 学会等名
      15th International Congress of Immunology
    • 発表場所
      ミラノ(イタリア)
    • 年月日
      20130823-20130826

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公開日: 2015-05-28  

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