研究実績の概要 |
L-グルタミン酸オキシダーゼについて,新たな基質特異性変換酵素の作成に成功した。R305H変異LGOXは,L-Gluに全く反応せず,20種の天然アミノ酸のうち,L-Tyrに対して最も高い活性を示した。 精製酵素のL-Tyrに対するKm値は3.0 mMであり,LGOXとほぼ同じ耐熱性,pH安定性を示した。 R305H変異LGOXを珪藻土に固定し,酵素センサーとしての実用性をH2O2電極により確認したところ,LGOXやHisOX, ArgOX同様に,利用可能であった。L-リシンα-オキシダーゼについては,大腸菌と放線菌両宿主で発現系の構築に成功した。 加えて,前駆体で発現させたLysOXをプロテアーゼ処理したところ,活性が約12 倍,比活性が約17 倍上昇するという結果を得ることができた。 組換え酵素を用いた性質検討の結果,L-Lysに対する高い基質特異性が確認できた。L-Lys以外ではL-Orn・L-Arg等に対してわずかに反応を示した。また,約1.7オングストロームの分解能を持つ基質複合体の結晶を得ることができ,LysOXのX線結晶構造解析に世界で始めて成功した。これにより基質認識に関与する残基としてD212,D315,A440が,高基質特異性の要因としてW371残基が推定された。 FADを補酵素として保有しないL-リシンε-オキシダーゼについても,X線結晶構造解析により立体構造を解明した。補因子として, Trp581とCys516が結合することでシステイントリプトフィルキノン(CTQ)を形成していることが判明し, CTQを補酵素として用いるLAOの存在を初めて明らかとした。 L-リシンとの共結晶から活性中心構造を明らかになり, L-リシンのε-アミノ基はTrp581とシッフ塩基を形成し, L-リシンのα-カルボキシル基はLys530と塩橋を, Gln519と水素結合を形成し, さらにL-リシンのα-アミノ基はGln519と水素結合を形成していることが判明した。このことより, L-リシン ε-オキシダーゼがL-リシンに対して高い基質特異性を有する構造的要因が明らかとなった。
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