研究実績の概要 |
本研究は難培養微生物が生産しているオリゴペプチドに着目し、創薬標的として注目を浴びているGPCR (Gタンパク質共役型受容体)リガンド活性に基づいたスクリーニングによる取得と、その生成に関わる遺伝子の特異的取得方法の確立を目的としている。 具体的には、申請者らが構築したカイメン共生・共在バクテリアのメタゲノムライブラリーの部分配列に基づいて構築されたデータベース中から、モチーフ検索によってアミノ酸リガーゼモチーフを持つクローンを選択し、スクリーニング対象を10万クローンから数十~百数十クローンに絞り、スクリーニングの効率化をはかった。GPCR (MCHR1, BRS3)のリガンドアッセイは、ヒトBRS3をヒト胎児腎臓細胞由来HEK 293T細胞に導入した一過性発現株を用いた。またチャイニーズハムスター卵巣細胞由来CHO細胞はHEK 293Tと異なるリガンド感受性を示すことから、この細胞を用いた一過性発現系も用いた。その結果、従来のスクリーニング効率より100倍効率を引き上げ、BRS3と反応する因子を生産している陽性クローン2株を得た。2株のうち、より活性が明確な#42 株のメタゲノム断片の全長シークエンスを決定した。その結果、活性に必要な領域は少なくとも3つのORFがコードされており、そのうち2つはオペロンを形成しており、さらにオペロンのみでもGPCRを刺激することが出来るが、全長を保持していた方が高活性であることが分かった。以上の結果から、サロゲートリガンドになり得るペプチドをコードする遺伝子の分離に成功したといえる。 さらに、環状ペプチド合成酵素であるNRPS遺伝子の特異的プライマーを用いて、夾雑細菌が存在する中、NRPS陽性細菌のみを特異的に、全ゲノム増幅に成功した。 以上の研究によって、今後のメタゲノムからの創薬シーズ探索への発展が期待される。
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