本研究では、航空機翼構造の形状を任意に変化させ、飛行性能や飛行特性を向上させる技術(モーフィング)を実現する手法として、超異方性複合材を用いたモーフィング翼構造を提案した。特に、実機相当の翼型を対象として、翼の後縁部をモーフィング部とした翼構造について、ワイヤー駆動型の駆動機構を選定し、モーフィング翼の設計解析を実施した。駆動機構を考慮した構造解析モデルにより、モーフィング翼の変形予測を行い、構造強度の安全性を確認すると共に、必要駆動力を推算し、モーフィング翼の設計を行った。超異方性複合材を用いて、風洞試験用のモーフィング翼模型を製作し、風洞試験設備により、30m/sまでの気流中において、製作したモーフィング翼の駆動を確認し、有害な変形や破壊も生じず、繰り返し使用可能なモーフィング翼を実証した。。モーフィング翼の実現性の実証と設計基盤技術の構築に成功した。 更に、モーフィング翼構造に適用した超異方性複合材は構造パラメータを変化させることで、剛性・変形しやすさをコントロール(設計)可能であり、構造パラメータの最適化によるモーフィング翼性能の向上に関する検討を実施した。構造パラメータを変化させることにより、ワイヤー駆動による変形形状も変化(変形後の翼型が変化)し、変形結果を入力した翼型解析結果から、揚力などの空力特性も異なることを確認し、空力特性が最大となるような構造パラメータを見出した。よりよい性能を発現しうるモーフィング翼を設計するための構造的な知見を得た。
|