研究課題/領域番号 |
24560972
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 克彦 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30402481)
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キーワード | 姿勢制御 / 宇宙機 / CMG |
研究概要 |
本研究では,1台の多自由度CMGによる宇宙機の姿勢制御方法の確立とその実験的検証を目的とし,H24年度は可変速2軸ジンバルCMGの設計・製作を実施した.H25年度にははじめに力/トルクセンサを用いたハイブリッドシミュレータを構築して,そのシミュレータ上でCMGの基本動作を確認した.このハイブリッドシミュレータは宇宙機の姿勢運動をコンピュータ上で模擬するものであるが,宇宙機の姿勢運動を物理的に実現するために,空気軸受で浮上することにより3軸自由回転を行う模擬宇宙機を製作した.この模擬宇宙機に可変速2軸ジンバルCMGおよび制御用計算機や電源を搭載して,外部との接続のない状態で,模擬宇宙機が単独で動作しうることを確認した.また,模擬宇宙機のプログラム開発を行うための開発環境を整備し,外部で開発したプログラムを模擬宇宙機に無線でダウンロードし模擬宇宙機上の制御用計算機により制御を実行するシステムを構築するとともに,模擬宇宙機の制御動作中の状態を,無線を通してモニタリングできるようにした. また1台の多自由度CMGによる姿勢制御アルゴリズムの検討を行い,H24年度に開発した姿勢制御アルゴリズムの改修を行ってシミュレーションにより動作確認を行うとともに,このプログラムを模擬宇宙機の制御用計算機で実行させて,その有効性を検証した.その結果,鉛直軸回りの姿勢の回転についてはほぼ想定した通りの姿勢制御を模擬宇宙機に対して実行できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空気軸受で浮上して3軸姿勢運動を実現する模擬宇宙機を製作し,前年度に製作した多自由度CMGを搭載して鉛直軸回りの姿勢制御の動作確認を行ったことで,ハードウェア面においては順調に推移していると考える.ただし,空気浮上させた模擬宇宙機において,水平軸回りに発生する重力トルクが当初想定していたよりも大きくなるため,水平軸回りの姿勢制御を行わせようとすると,多自由度CMGのジンバル角の動きが大きくなりすぎるという問題点が見られた.これは,CMGのジンバル角の運動にともなうCMG自体の重心位置の変動が比較的大きく,CMGも含めた模擬宇宙機全体の重心位置が一定とは見なせないことによると考えられる.今後は模擬宇宙機の重心変動を極力小さくするとともに,模擬宇宙機の重心と3軸空気軸受の回転中心を一致させるような模擬宇宙機の重心設定方法を確立して,水平軸回りの姿勢制御の動作確認を行う予定である.また,姿勢制御アルゴリズムについてはH24年度に開発した3軸姿勢制御アルゴリズムに改修を加えて国際学会で発表するとともに,姿勢制御シミュレーションを行って論文投稿した.
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今後の研究の推進方策 |
模擬宇宙機上に多自由度CMGを搭載したシステムが構築できたので,このシステムにおいて姿勢制御アルゴリズムの検証を行う.とくに水平軸回りに姿勢制御を行わせる場合には,現状では重力トルクの影響が無視できないので,この重力トルクを低減する方策をたてた上で姿勢制御実験を行う必要がある.重力トルクを低減するためには,ジンバル軸の回転にともなう多自由度CMGの重心移動を抑えつつ模擬宇宙機の重心と空気軸受の回転中心を一致させる必要があり,これらを段階を踏んで調整する.また,多自由度CMGによる3軸姿勢制御の検証を行った後は,ホイールの回転自由度とCMGのジンバル軸1軸の2自由度を用いた模擬宇宙機の指向制御実験を行う.指向制御とは模擬宇宙機の特定の軸をある向きに向ける制御であり,このときに制御する必要のある自由度は2自由度なので,CMGの自由度を制限しても実現可能である.この制御アルゴリズムについては,すでに基本方式を開発しているが,模擬宇宙機に実装可能であることを確認した上で,姿勢制御実験を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
模擬宇宙機の構築のためのハードウェア購入において,一部の保守部品の購入を実験状況に応じて決定するよう購入時期を延期させたため. ハードウェアに関してはほぼ実装を行ったので,蓄電池など一部の保守部品について購入する.また研究協力者である大学院生が実験を行うための旅費,および学会発表を行うための旅費として充当する.
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