研究課題/領域番号 |
24560974
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
淺井 雅人 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (00117988)
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研究分担者 |
稲澤 歩 首都大学東京, システムデザイン研究科, 助教 (70404936)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 境界層 / 流れの不安定性 / 乱流遷移 / 壁面粗度 / T-S波動 / 平面ポアズイユ流 |
研究概要 |
本研究は,翼の層流化制御の実現や境界層遷移の予測能力の向上に不可欠な,微小な壁面粗さが乱流遷移に及ぼす効果を解明し,壁面粗さを考慮したより現実的な遷移予測を行うための基礎研究である.本年度は,まず,零圧力勾配下の境界層遷移の始まりを支配するトルミーン・シュリヒティング波動(T-S波動)と同程度の波長をもつ微小振幅の三次元壁面凹凸(正弦波形状粗さ)について,壁面凹凸がT-S波動の増幅に及ぼす効果を実験的に調べ,次の結果を得た. 二次元粗さと三次元粗さでは層流境界層の安定性に及ぼす影響は大きく異なり,二次元粗さ(壁面凹凸)については極めて小さな凹凸振幅(境界層排除厚さの10%以下)に対しても強い不安定化作用を示すのに対し,三次元粗さ(三次元壁面凹凸)では境界層排除厚さの20%程度の凹凸振幅でも不安定性の促進効果がほとんどないことが示された.すなわち,二次元凹凸の場合には,粗さレイノルズ数(粗さ高さと壁面摩擦速度に基づく)で言えば1以上で不安定性を促進するのに対し,三次元凹凸では粗さレイノルズ数が5程度でも二次元T-S波動の成長が滑面の場合とほとんど変わらなかった.ただし,三次元凹凸の場合,壁面凹凸による平均流の歪と二次元T-S波動の非線形干渉によりの両者の振幅の積に比例した振幅の三次元波動が生成され,凹凸壁の波長がT-S波動のそれと同程度の場合,その三次元波がT-S波動の三次元化(二次不安定)を支配することが観察された. また,境界層と同様の粘性型の不安定性を示す平面ポアズイユ流において,微小壁面段差がT-S波動の増幅に及ぼす影響を実験,数値計算,理論解析により調べ,段差の影響が非常に下流まで続くことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三次元粗さが二次元粗さに比べトルミーン・シュリヒティング波動の成長に及ぼす影響が弱いことはこれまでの実験結果からある程度予測できたが,三次元粗さ(壁面凹凸)がほとんど全く不安定性を促進しないことが見いだされたことは大きな成果である. 24年度は実験に集中したため,壁面凹凸がある場合の安定性解析についてはまだ手を付けていない.
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今後の研究の推進方策 |
壁面粗さが境界層不安定に及ぼす影響について,実績概要のように,これまでに重要な知見が得られたが,一般に分布表面粗さはT-S波動の波長よりも小さな波長の三次元凹凸からなるため,さらに壁面粗さの安定性への影響に対する凹凸波長の効果を見る必要がある.25年度の継続課題とする.安定性理論からのアプローチが比較的容易な平面ポアズイユ流を対象とした実験,数値シミュレーションについても今後力を注ぐ予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(25年度)は種々のスケールの壁面粗さモデルを製作依頼する必要があるため初年度の物品費の一部を繰り越し,モデル製作に充てる.次年度の研究費は壁面凹凸モデル製作費と成果発表のための旅費である.
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