研究課題/領域番号 |
24560974
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
淺井 雅人 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (00117988)
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研究分担者 |
稲澤 歩 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (70404936)
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キーワード | 境界層 / 流れの不安定性 / 乱流遷移 / 壁面粗度 / T-S波動 / 平面ポアズイユ流 |
研究概要 |
本研究は,翼の層流化制御の実現や境界層遷移の予測能力の向上に不可欠な,微小な壁面粗さが乱流遷移に及ぼす効果を解明し,壁面粗さを考慮したより現実的な遷移予測を行うための基礎研究である.これまでに明らかにされた二次元粗さと三次元粗さの境界層の安定性に及ぼす影響の大きな違いをさらに確証するため,粗さの三次元形状効果に関する実験とともに,粗さによる不安定化の効果が粗さスケールにどれほど依存するかについても研究を進めた.前者については,波状壁面の方向をトルミーン・シュリヒティング波動(T-S波動)の波面と同方向からに直角方向になるまで徐々に変化させた.後者については,境界層遷移の始まりを支配するT-S波動と同程度の波長をもつ正弦波形状粗さから1オーダー小さな波長(スケール)まで変化させた.以下に主な結果をまとめる. 正弦波形状の壁面粗さを二次元的配置から二次元T-S波動の波面と異なる斜行配置へと変化させると,二次元粗さ(凹凸)分布で見られた不安定化(T-S波動の増幅)の促進は徐々に弱められ,斜行角が90度に近づくにつれて平面壁上の境界層(ブラジウス境界層)の不安定特性に漸近することが示された.また,T-S波動と直角配置の斜行角度が90度の場合,平均流は壁面近くでスパン方向に周期的に変化するが,ブラジウス境界層の不安特性とほとんど全く変わらない.一方,二次元波状粗さの不安定促進効果は波状壁の波長を1オーダー変化させても維持された.すなわち,二次元粗さは広いスケールの範囲でT-S波動の増幅を促進することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次元粗さと三次元粗さの境界層の安定性に及ぼす影響に大きな違いがあることが単純な幾何学形状の壁面粗さを用いて明らかにされたことは大きな成果であり,国際学術誌Journal of Fluid Mechanicsに掲載された.さらに,本年度の追加実験によりその結果がより補強された.
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今後の研究の推進方策 |
壁面粗さが境界層不安定に及ぼす影響について,実績概要で述べたように,これまでに重要な知見が得られた.これまでの研究を継続するとともに,今年度,安定性理論からのアプローチが比較的容易な平面ポアズイユ流を対象とした実験および理論解析にも力を注ぐ予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
26年度もいくつかのモデルで実験を続ける必要があり,そのための壁面粗さモデル製作費を次年度に確保した. 26年度は追加の壁面粗さモデルを製作依頼する必要があるため物品費を少し繰り越し,モデル製作に充てる.研究費の主なものは,壁面粗さモデルの製作費と成果発表のための旅費である.
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