本研究は,翼の層流化制御の実現や境界層遷移の予測能力の向上に不可欠な,微小な壁面粗さが乱流遷移に及ぼす効果を解明し,壁面粗さを考慮したより現実的な遷移予測を行うための基礎研究である.まず,正弦波状の壁面粗さ(凹凸)を用いて,二次元粗さと三次元粗さの境界層の安定性に及ぼす影響の大きな違いが明らかにされた(結果はJ. Fluid Mech. (2014)に掲載済み).また,正弦波形状の壁面粗さを二次元的配置から二次元T-S波動の波面と異なる斜行配置へと変化させると,二次元粗さ(凹凸)分布で見られた不安定化,すなわちトルミーン・シュリヒティング(T-S)波動の増幅の促進は徐々に弱められ,斜行角が90度に近づくにつれて平面壁上の境界層(ブラジウス境界層)の不安定特性に漸近することが示された.T-S波動と直角配置(斜行角度が90度)の場合,平均流は壁面近くでスパン方向に周期的に変化するが,ブラジウス境界層の不安特性とほとんど全く変わらないことが明らかにされた(結果はJ. Phys. Soc. Japan (2014)に掲載).今年度は,前年度に引き続き波状粗さの不安定促進効果を実験的に調べ,波状壁の波長をT-S波動の波長程度から1オーダー小さなスケールまで変化させても,ほぼ同じ程度にT-S波動の増幅を促進し,特に波状粗さの波長が短く,その凹部に小さなはく離泡が形成されても不安定性の促進効果に大きな変化が無いという興味深い結果が得られた(この結果はTrans. Japan Soc. Aeron. Space Sci.に掲載決定).
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