研究課題/領域番号 |
24560982
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴木 俊之 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 研究員 (20392839)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 軽量熱防御システム |
研究概要 |
複合材スキン,軽量断熱材,及びハニカム構造体から構成される非アブレーション超軽量熱防御システムを開発するにあたり,様々な材料を用いて直径40mm~100mmの実験室モデルを製作した.複合材スキンと断熱材との接着にあたり高温用炭素接着剤を使用するが,熱処理を行うために大型のガス置換マッフル炉を購入し,供試体製作の効率化を図った.また製作した実験室モデルを用いてアーク加熱風洞において加熱試験を行い,耐熱特性を比較することで材料のスクリーニングを行った. 本研究により,複合材スキンの耐酸化コーティングについては化学気相蒸着法によるコーティングよりも簡便法によるコーティングの方が製作工程の大幅短縮が図れるとともに,熱的な特性に優れていることが判明した.また断熱材として従来の米国産炭素発泡材に代わり国産炭素繊維成形体を使用することにより,断熱性を改善するとともに熱防御システム重量の低減を図ることができた.特に現在JAXAで検討が進められている火星エアロキャプチャミッションに本熱防御システムを適用した場合,熱防御システムの機体重量比は10%程度に抑えることが可能であることが判明した. 一方で炭素接着剤による接着方法については,一部の供試体について接着部の剥離が見られるなど,今後解決しなければならない課題が見つかった.また本研究で使用している炭素繊維成形体の断熱材について,気孔部分に存在するガスの対流・輻射加熱による影響も含めた熱伝達特性の解明が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合材スキン,軽量断熱材,及びハニカム構造体から構成される非アブレーション超軽量熱防御システムを開発するにあたり,様々な材料を用いて実験室モデルを製作するとともに,当初目標に掲げていた耐酸化コーティング手法や断熱材材料に関するスクリーニングを完了することができた点については概ね順調に進展している. 一方で複合材スキンと断熱材との接着については,一部の供試体で想定外の接着部剥離が散見されるなど,まだ接着手法の確立に向けて課題が残っている.しかしながら断熱材材料のスクリーニングにより断熱性の大幅改善が図られるとともに,これにより熱防御システムの軽量化が図れるなど,当初の計画以上に進展している部分もある.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって明らかになった複合材スキンと断熱材との接着手法を改善するとともに,多孔質断熱材の熱伝達特性解明に向けた研究を展開する. 接着手法の改善に向けては,接着面の粗度を管理する.また断熱材の異方性に着目して熱膨張モデルを開発し,接着時の熱処理による断熱材の熱膨張をシミュレーションする.これにより熱処理時の膨張による破壊を避ける.また加熱試験を行うことにより接着した試験片の接着性について検証を行う. 多孔質断熱材の熱伝達特性の解明に向けては,X線CTを用いた多孔質断熱材の3次元モデルの構築と内部微小形状の解明を行うとともに,シミュレーションにより熱伝導特性及び空隙内部の対流・輻射熱伝達特性を解明する.またバルク材としての物性値計測や加熱試験結果との比較を行い,詳細物理を設計モデルへ落とし込む.
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次年度の研究費の使用計画 |
接着手法の改善に向けて,複合材スキンと断熱材,及び炭素接着剤を購入して接着試験を行う.また接着した試験片を用いて加熱試験を行い耐熱特性と接着強度を評価する.また断熱材の熱膨張率計測を行うにあたり,断熱材の加工を行う. 多孔質断熱材の熱伝達特性解明に向けて,多孔質断熱材の3次元モデルの構築と内部微小形状の解明を行うにあたりソフトウエアを購入する.また詳細モデルから設計モデルへの落とし込みを行うにあたり,断熱材の物性値計測を行い更に加熱試験を行う.この際に断熱材加工や供試体製作を行う.
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