研究課題/領域番号 |
24560982
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴木 俊之 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発本部, 主任研究員 (20392839)
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キーワード | 熱防御システム / 非アブレーション / 大型化 / 火星探査 |
研究概要 |
本年度は,昨年度明らかになった非アブレーション熱防御システム(以下,NALTと略記する)の接着や熱伝達特性の問題解明を行った.また将来実大スケールのエアロシェルを製作する際の問題点を明らかにするために,直径600mmの中型サイズの試作を行い,環境試験を行うことでNALTのTRLを向上させた. C/Cスキンと断熱材との接着については,昨年度一部の試験片で剥離が見られた.そこで本年度はスキン接着面の大きさ,曲率,粗度をパラメータとした接着試験を行い,接着のために最適な接着面大きさ,曲率,粗度を決定した.また断熱材の熱膨張率モデルを用いた熱構造解析を行い,熱処理時に大きな負荷がかからないように断熱材間隙間を決定した.今後は接着試験で製作した試験片の引張り試験を行い,接着部強度の評価を行う予定である. NALTの熱伝達特性について,NALTの評価解析精度向上を目的として,内部熱伝達に対する輻射熱伝達の寄与を調査した.まず断熱材の内部構造をX線CTモデルで再現し,それを元に輻射輸送係数を評価した.更に輻射輸送係数を用いたエネルギー輸送計算を実施し,加熱試験で得られたNALT内部温度履歴データとの比較を行った.これにより,輻射熱伝達を考慮した場合の温度変化は小さく,NALT内部熱伝達に対する輻射熱伝達の寄与は非常に限定的である可能性があることが示唆されている.光の波動性(回折)を考慮した輻射伝搬計算及び有効熱伝導率測定による検証は今後の検討課題であり,次年度も継続する予定である. 直径600mmの中型サイズの試作を行い,PFM製造プロセス成立性の検証を行った.大型シェルにおいても接着工程が妥当であり適切に実現できることを検証した.更に中型モデルを用いた熱真空試験や振動試験を行い,軌道上熱サイクルによる熱応力発生時の機械的健全性を検証するとともに,打上げ振動環境における健全性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スキンと断熱材との接着手法を改善し,断熱材内部の熱伝達特性を一部解明することができた点については概ね順調に進展している.一方で,NALTの熱伝達特性の全容解明や接着強度の評価については一部課題も残っている.しかしながら中型サイズの試作を行い,いくつかの機械的健全性の検証に成功し,大型化に向けた目処が立っているなど,当初の計画以上に進展している部分もある.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において積み残しとなっている接着部強度評価と熱伝達特性の解明に向けた研究を展開する.接着部の強度評価に向けて,昨年度の接着試験において製作した試験片を用いて引張り試験を行う.これにより接着部の引張り強度を定量化するとともに,接着手法の妥当性を検証する.熱伝達特性の解明に向けては,まず光の波動性(回折)を考慮した輻射伝搬計算を行う.更に有効熱伝導率の測定を行い,加熱試験データとの比較を通して評価モデル精度向上を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年1月から出向したことにより,年度計画に若干の変更が生じたため. 年度計画変更により実施できなかった研究については,出向から戻り次第速やかに実施する予定である.具体的には引張り試験実施に必要な消耗品の購入や,熱伝達特性解明に向けた計算機環境の構築,更に研究成果公表に向けた学会発表の旅費として使用する予定である.
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