研究課題/領域番号 |
24560983
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
中山 宜典 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, システム工学群, 准教授 (80532770)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / ロケット / イオンエンジン / 希薄気体 / 圧力計測 / 推進剤 / 耐久性向上 / 弱電離プラズマ |
研究概要 |
宇宙用ロケットの一種であるイオンエンジンの耐久性向上を図るには、イオンエンジン内で形成される推進剤ガス流れ(中性粒子流)を捉える必要があるが、通常の真空計や圧力計では計測困難な希薄圧力(計測誤差が大きい圧力範囲)であるゆえに、妥当かつ詳細に計測できていない。本研究の目的は、通常大気中で使用される隔膜式微差圧計を真空中で用い、圧縮容器や保温装置等を計測精度補償のために用いるアイディアを導入することにより、イオンエンジンや他の宇宙用ロケットの希薄な推進剤流れを計測することである。 初年度(24年度)の研究目標は、イオンエンジン推進剤流れの計測に有用な計測系を構築し検証することであり、慎重にチューニングした隔膜式微差圧計を導入し、低流路抵抗化を図った計測配管系および3軸ステージによる配管移動系と併せて計測系を構築した。計測妥当性を検証するために、一般的なイオンエンジンとほぼ同じ大きさで内部を簡素化したダミーエンジンを設計製作した。また計測精度補償用の圧縮容器および保温装置を導入・構築した。 これらを用いて一般的イオンエンジンとほぼ同程度の推進剤流量に対して計測したところ、希薄圧力10~100 mPaに対して10%以内の計測精度を確認した。この計測精度は本研究で使用した推進剤供給用流量調整器の設定誤差にほぼ相当する。この希薄圧力に対する従来の真空計や圧力計の計測精度は30%程度が最良であるため、本研究で構築した計測系は十分有意であると考えられる。高精度な推進剤供給用流量調整器を導入し、構築した圧縮容器および保温装置を用いて検証すれば、さらに高い計測精度が得られるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオンエンジン推進剤流れの計測系を構築し、計測精度補償用の圧縮容器や保温装置の構築も計画通り遂行した。また希薄圧力10~100 mPaに対して10%以内の計測精度を確認した。初年度(24年度)の研究目標は、イオンエンジン推進剤流れの計測に有用な計測系を構築し検証することであったので、研究目標はおおむね達成したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(24年度)に構築した希薄な推進剤ガス(中性粒子)圧力計測系の計測精度は推進剤供給用流量調整器の設定誤差とほぼ同程度まで確立できたことから、まずは推進剤供給用流量調整系を改善することを図り、推進剤ガス圧力計測系単体の計測精度を評価する。この計測精度評価には、今年度中に構築した圧縮容器および保温装置も併用し、計測精度5%以下を目指すことを次年度の一つの達成目標としたい。 また、イオンエンジン内に一般的に設置されているバッフル(推進剤障壁)やアノード(放電用陽極)等の要素部品を今年度製作したダミーエンジン(一般的イオンエンジンを簡素化したエンジン)内に取り付け、要素部品が推進剤流れに与える影響を計測評価する。またエンジン内壁面の材質(表面粗さ等)による影響も計測評価する。申請者が開発してきた希薄気体流れの数値計算コードによる解析結果と比較評価し知見を得る。これらの評価を次年度のもう一つの達成目標としたい。 次年度までに得られる成果を国内外の学会や学術雑誌等にて報告する予定である。さらに、次年度までに得られる知見をもとに、他の電気推進機に対する推進剤ガス(中性粒子)流れの計測評価を次々年度までの達成目標としたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入業者と本学との契約によって生じた余剰経費であり、次年度研究費の一部として以下の器材の購入等に充当したい。 ・流量調整器、絶縁計測器 ・真空部品、保温部品、金属材料、絶縁材料 ・学会参加旅費(29th International Symposium on Space Technology and Science, Japan)
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