研究課題/領域番号 |
24560983
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
中山 宜典 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, システム工学群, 准教授 (80532770)
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キーワード | 航空宇宙工学 / ロケット / イオンエンジン / 希薄気体 / 圧力計測 / 推進剤 / 耐久性向上 / 弱電離プラズマ |
研究概要 |
宇宙用ロケットの一種であるイオンエンジンの耐久性向上を図るには、イオンエンジン内で形成される推進剤ガス流れ(中性粒子流)を捉える必要があるが、計測困難な希薄圧力であるゆえに、妥当かつ詳細に計測できていない。本研究の目的は、通常大気中で使用される隔膜式微差圧計を真空中で用い、イオンエンジンの希薄な推進剤流れを計測することであり、25年度(第2年度)の研究推進方策は、(1)24年度に構築した推進剤ガス(中性粒子)圧力計測系の計測精度向上、(2)要素部品が推進剤流れに与える影響評価、(3)数値解析との比較評価、であった。 計測系の見直し改良、圧縮容器の併用、および高精度流量調整器の適用により、24年度で達成した計測精度よりも向上させ、イオンエンジン内の圧力範囲において5%の計測精度を達成した。この圧力範囲に対する従来の真空計や圧力計の計測精度は30%程度が最良であるため、本研究で構築した計測系はさらに有意性が増したと考えられる。この改良計測系を用いて要素部品を取り付けたイオンエンジン内部(複雑な流れ形成)を計測したところ、想定した計測結果と少し異なる値を得た。妥当性評価を通して開発した希薄流解析コードを用いて数値解析を行ったところ、エンジン内部を計測するための挿入管の影響であると推察された。挿入管を含めた数値解析を行った結果、計測結果とよく一致したので、改良計測系と数値解析とを両用することによって信頼度が高い圧力分布(推進剤流れ)が得られると考えられる。なお、この挿入管の影響は高い計測精度を達成したことによって判明したもの、と強調したい。 また、開発した希薄流解析コードを用いてイオンエンジン作動時の真空槽内圧力分布の解析を行い、イオンエンジン作動に適した真空槽についての知見も得た。この知見はイオンエンジン開発用真空槽の設計に有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオンエンジン推進剤流れの計測系を改良構築し、25年度の研究目標であった、計測精度向上・数値解析評価併用等を計画通りに遂行できた。最終年度に実施する予定だったイオンエンジン作動時の真空槽内推進剤流れ解析を遂行することもでき、イオンエンジン用真空槽の設計に有用な知見も得た。これらのことから、25年度の研究目標はおおむね達成したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である26年度では、24年度および25年度において開発してきた希薄圧力計測系および希薄流解析コードを用いて、(1)イオンエンジン下流の圧力分布、(2)他の電気推進機内部の圧力分布を評価することを目標としたい。 イオンエンジン下流の推進剤流れはエンジンの寿命に影響を与える。地上試験においては真空槽内で反射・滞留するため、宇宙空間作動時とは異なる圧力分布となり、妥当なエンジン寿命評価が難しい。本研究の計測系および数値解析を用い、真空槽内の推進剤(中性粒子)圧力分布を取得し、寿命評価に対する知見が得る。そのために、計測補助用の冷陰極真空計、数値計算用の電子計算機、結果表示用のソフトウェアを導入する。また、他の電気推進機、特にホールスラスタはイオンエンジンとほぼ同程度の推進剤(中性粒子)圧力にて作動している。他機関のホールスラスタを参考にダミースラスタを製作し、本研究の計測系および数値解析を用いて圧力分布評価を行う。そのために、スラスタ製作材料および真空部品を導入する。 またこれまでに得られた計測結果および知見を学会にて発表するとともに、学術雑誌にて報告する。そのために、旅費・参加費・掲載料を計上する。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会参加費・旅費を公費支弁としたことによって発生した余剰費である。 次年度研究費の一部として以下の器材の購入等に充当したい。 ・電子計算機、ソフトウェア、真空部品、金属材料、絶縁材料
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