研究課題
宇宙用ロケットの一種であるイオンエンジンの耐久性向上を図るには、イオンエンジン内で形成される推進剤ガス流れ(中性粒子流)を捉える必要があるが、計測困難な希薄圧力であるゆえに、妥当かつ詳細に計測できていない。本研究の目的は、通常大気中で使用される隔膜式微差圧計を真空中で用い、イオンエンジンの希薄な推進剤流れを計測することであり、26年度(最終年度)の研究推進方策は、25年度(第2年度)にて計測精度を向上させた推進剤ガス(中性粒子)圧力計測系を用いて、(1)イオンエンジン下流の圧力分布、(2)他の電気推進機内部の圧力分布、を得ること、であった。イオンエンジン下流の圧力分布はエンジン内部よりも1~2桁低い圧力であるが、25年度にて改良した圧力計測系によって計測が可能であることが確かめられた。これにより、イオンエンジンの推進剤流れはグリッドシステム(推進剤やイオンが通過する複数の多孔板)の開孔パターンに強い影響を受けること、エンジン内部の推進剤流れがエンジン下流にも影響を与えることが分かった。この知見はイオンエンジンの中和現象評価(エンジン下流部における電子とイオンとの干渉)に活用できた。エンジン下流の推進剤流れはエンジン寿命や中和現象に大きな影響を及ぼすため、本研究で開発した圧力計測系は今後のイオンエンジンの開発に有意に利用できることが確かめられた。また電気推進機の一種であるホールスラスタに対しても計測を行ったところ、イオンエンジンと同様の傾向および知見が見られた。本年度で得られた成果から、イオンエンジン作動時の真空槽圧力分布に関する知見も併せて得られ、地上試験装置(真空排気装置)がイオンエンジン作動に与える影響が大きいことが導かれた。宇宙空間作動時のイオンエンジンの推進性能を妥当に得るには、この地上試験装置の影響評価を進めなければならないと考えられる。
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IEEE Transaction on Plasma Science
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Transactions of the Japan Society for Aeronautical and Space Sciences, Aerospace Technology Japan
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