研究課題/領域番号 |
24560985
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
地引 達弘 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (40322094)
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研究分担者 |
志摩 政幸 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70092583)
菅原 隆志 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助手 (90456319)
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キーワード | 船舶海洋工学 |
研究概要 |
1)ハイスピードカメラを組み込んだ直接観察実験のための準備を行い、完成した。 2)くぼみと溝の双方の特徴を併せ持つと考えられる「長径くぼみパターン」の作製実験を行った。溝の大きさW=30.3μm、ピッチP=40μmとし、全長Lを変化させたもの(4種類)、および比較用の鏡面仕上げ表面(1種類)、合計5種類のパターンを試験面に形成させ、サファイアレンズを摩擦試験の相手材とした往復動試験装置を用いて、潤滑油使用下でのハイスピードカメラによるコマ送り直接観察を行い、現象の観察に主眼を置いた実験を行った。その結果、摺動方向の後流側で潤滑油の欠乏領域と、その周辺で気泡が観察された。欠乏領域、および、発生する気泡ともに、微細加工表面の方が、鏡面仕上げよりも小さかった。 3)並行して、長径くぼみパターンの有効性について、過去に実施したくぼみパターン、および、一方向溝パターンと比較、検討を行った。くぼみパターンの場合には、くぼみに存在する潤滑油が、荷重の一部を受け持ち、接触面内に存在することによって、潤滑油の欠乏を抑えることにより、表面微細加工の効果が発現する可能性がある一方で、一方向溝パターンの場合、接触面内に存在する潤滑油が、荷重を受け持たずに、接触領域外部に容易に排出されてしまうことが考えられる。くぼみと溝の双方の特徴を併せ持つ「長径くぼみパターン」の場合には、接触面内に存在する潤滑油が荷重の一部を受け持つが、存在するくぼみの数が少ないためか、通常のくぼみパターンの場合のような顕著な効果は、直接観察のみからは、確認することはできなかった。直接観察を行いながら、同時に接触電気抵抗を測定する方法を検討することが重要であることがわかった。 4)得られた実験結果をまとめ、研究発表(トライボロジー会議 福岡)を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)「長径くぼみパターン」の作製に成功し、ハイスピードカメラを用いた往復摺動潤滑面のコマ送り直接観察に成功した。 2)「長径くぼみパターン」の潤滑特性向上効果について、「くぼみパターン」、および、「一方向溝パターン」と比較した結果、潤滑油の欠乏領域の大小と発生する気泡の大小を観察した範囲では、「一方向溝パターン」以上の効果があるものと考えられた。今後、直接観察と同時に接触電気抵抗を測定することにより、更なる定量的な向上効果が確認できるものを考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)ここまでの研究結果において、「くぼみパターン」と「溝パターン」の双方のメリットを合わせ持つ、「長径くぼみパターン」の検証を行った。今後の研究の推進方策としては、直接観察と同時に接触電気抵抗の測定が行えるよう、装置の改善を試みる計画である。併せて、潤滑油の欠乏領域と気泡の発生について、潤滑油の接触圧力に関する計算を行い、理論的なアプローチも試みる計画である。 2)ここまでの研究結果から、往復摺動を行う際の、ストロークの大きさによって、有効な微細加工パターンが異なることがわかってきた。すなわち、ストロークが1mmよりも小さな「微小往復摺動」の場合には、接触領域の内外に通じた潤滑油の通り道を持つ、「交差溝パターン」が有効であること、1mmよりも大きな「往復摺動」の場合には、潤滑油が荷重を受け持つ能力があると考えられる、「くぼみパターン」が有効であることがわかった。今後の研究の推進方策として、微小往復摺動条件下において、「くぼみパターン」と「交差溝パターン」の2種類の微細加工表面を用いて、ハイスピードカメラを用いたコマ送り直接観察を実施し、「交差溝パターン」の方が、微小往復摺動条件下で有効な理由について検討を行う計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.往復摺動面の直接観察に使用するサファイア半球レンズを、追加で購入する必要等が生じた。 1.サファイア半球レンズを、追加で100000円分程度を購入する計画である。
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