研究実績の概要 |
本研究では沿岸域で設置可能な中規模の風力発電システムを提案する。これは浮体式洋上風力発電システムに波浪推進装置を組み合わせたハイブリッド型洋上風力発電船であり、波による漂流、動揺を抑え、係留系にかかるコストを軽減することをその特徴とするものである。これまでに、想定実機の概念設計を行うと共に実験模型を用いた規則波中性能実験を行った。その結果,船体下部の水中翼により、波に逆らって船体を前進させようとする推力が幅広い波周期で働くと共に、波浪中ピッチ運動が大きく(最大90%減)軽減される等、本システムの実現に向けて十分期待をもてる結果を得ることができた。しかし、実際には船体下部の水中翼が流体力学的にどのように船体運動低減に寄与するのか、その詳細は分かっておらず、翼部の最適設計のためにはそれを明らかにする必要がある。そこで本年度は、ハイブリッド型洋上エネルギー開発システムの実現に向けて、水中翼が波浪中ピッチング動揺減衰性能に及ぼす流体力学的影響を模型実験により調べた。 プラットフォーム模型の波浪中ピッチング運動に関する付加慣性モーメントや減衰力などのラディエーション流体力の特性を明らかにするために、ピッチ運動に関する静水中強制動揺実験を行った。その結果、減衰力は造波減衰力の影響は小さく、ほとんどが粘性減衰力であることが分かった。これは水中翼が十分深い位置に設置されていることによる。また、様々な翼形状や単なる平板も含めて比較した結果、これら減揺板の翼(板)面積や投影面積が等しければ、付加慣性モーメントや減衰力に大きな差異が無いことが分かった。また、可動翼と固定翼を比較した結果、可動翼の方が短周期域において付加慣性モーメントが小さくなることも分かった。また、弦長の大きい翼板は長周期域における減衰効果が高いことが分かった。
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