研究課題/領域番号 |
24560992
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
土屋 健伸 神奈川大学, 工学部, 准教授 (50291745)
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研究分担者 |
遠藤 信行 神奈川大学, 工学部, 教授 (20016801)
穴田 哲夫 神奈川大学, 工学部, 教授 (20260987)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 音響レンズ / フォノニック結晶 / 平面レンズ / GPU |
研究概要 |
研究で期間内に明らかにする事は平面状音響レンズの実用化に向けて,低減衰で小型・軽量な音響レンズを設計する方法を開発することである.海洋で用いる音響レンズの実用化に当たっては大きさと重量の問題点があることからフォノニック結晶構造と集束音場の関連を明らかにし,最適な結晶構造配置を設計するアルゴリズムの開発とプログラムの作成を行う.さらに試作モデルによる音響レンズ性能に係わる集束音場特性を把握する. 本年度は平面状音響レンズの設計手法の確立を目指して,設計ソフトウェア(音波伝搬プログラム)を開発した.更に解析時間の長期化の問題に対してGPU(Graphic Processing Unit)に対応したプログラムに改良した.その結果として従来の数十倍以上にプログラムが高速化され,レンズ形状の最適化に有する時間を大幅に短縮した.計算時間の短縮によって計算処理を繰り返す遺伝的アルゴリズム(GA)の導入が可能となった.よって,水中映像取得装置に装着する平面レンズを設計し,軽量で小型となる最適なフォノニック結晶構造配置を決定することが可能となった. そして,開発した解析プログラムを用いてレンズ重量を軽量化するために材質を変化させたレンズを設計した.さらに,空気中での使用も可能とするためにレンズを覆う形での保護膜を形成したレンズを考案し,フォノニック結晶構造を用いた音響レンズの実用化に近づいている. さらに,解析プログラムによって最適化された平面音響レンズの周波数特性や集束利得などレンズの基本特性を得ることができ,フォノニック結晶構造音響レンズの特徴を把握した.得られた成果はIEEE Ultrasonics Symposium2012や第33回超音波シンポジウムにて発表を行い広く成果を公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である新しい平面状音響レンズの実用化のためのレンズ設計手法開発の実現には,効率的な開発工程として数値解析実験と実測による実験を行う必要がある.さらに数値解析では本研究室開発の時間応答解析を得意とするるPCクラスタを用いた並列 演算FDTD法を,GPU(Graphic Processing Unit)を用いた高速プログラム版に改良して複数のGPUを用いて高速に計算できるようにした.今後,音響レンズ形状の最適化のために遺伝的アルゴリズム(GA)を導入して最適化プロセスの時間を短縮する予定であり,GPUの利用はより高度な成果を得る可能性を秘めている.現在GAを導入したレンズ設計ソフトウエアの開発に着手している. 開発した設計ソフトウェアは,解析時間の長期化の問題をGPUに対応させることで解決した高速プログラムであり,改良によって計算速度が数十倍以上高速になった.その結果,音響レンズ形状の最適化の時間を大幅に短縮した.計算時間の短縮によって多数回計算処理を繰り返す遺伝的アルゴリズム(GA)の導入が可能となった. 水中映像取得装置に装着する平面レンズを設計し,小型となる最適なフォノニック結晶構造配置を決定した.更に軽量化のためにレンズ作成に適用可能な様々な素材での解析を行い軽量音響レンズを開発した.なお設計した音響レンズはまだ試作を行っていないため,今後行う予定である. 以上の理由により研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず縮尺変更した等価レンズを試作,計測を行う.測定結果と解析結果を比較して設計通りの性能を確認することによって効率的な音響レンズ開発を行う.当研究室で保有する水槽中に 740kHzの超音波を照射し, 3軸精密移動装置(精度1μm)でハイドロフォンを稼動させレンズ後方の音場を測定し,集束特性を測定する. 等価レンズによる測定で最適化を図った後,レンズを実寸大で作成する.実寸大レンズは(独)港湾空港技術研究所が所有する大型水槽(3m x 3m x 1m)を用いて実測を行うことが可能である.大型水槽には既に過去の研究によって音響レンズの音場測定システムが構築されており,レンズの固定具を変更するだけで簡単に測定環境を構築可能であり,非常にリーズナブルかつスピーディな成果を得る選択である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,縮尺変更した等価レンズを試作して音場計測を行い,性能を評価する.前年度には音響レンズの設計は完了したが,完了時期が年度末であるために,レンズを試作し実機による音場測定を未だ実施していない.そのために研究費に残金を生じさせたが,本年度はレンズを複数毎製作することでレンズ性能評価に必要なデータを数多く収集する予定である. 同時に今年度作成したプログラムに多数回計算処理を繰り返す遺伝的アルゴリズム(GA)を導入する.GA導入に併せて,更に高負荷な数値解析を行うためにGPUを複数搭載したPCに更にGPUを増やし,高速化と計算メモリの大容量化を計る.そして,そのPCをクラスタ化して高速ネットワークで接続することで複数台での大規模化解析を行う予定である.また,平面形状のレンズだけでなく,フレキシブルな形状のレンズを設計する予定である.さらに空気中での使用も考えた設計も実施したので,空気中においても集束音場測定を行う予定である. 得られた成果は第34回超音波シンポジウムや1st Underwater Acoustic Conference にて発表を行う予定である.
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