海中周囲雑音を音源として物体を映像化する手法を周囲雑音イメージングと呼ぶ.雑音源位置は海域によって様々で,ターゲットとの配置関係は探知結果に影響を与える.本研究では,周囲雑音イメージングにおいて雑音源位置が探知映像に与える影響を調査する.ここで,ターゲットの前方に雑音源がある条件を前方照明と呼び,背後に雑音源がある条件を後方照明と呼ぶ.内浦湾上のバージ周辺を想定海域とすると,雑音源は主にテッポウエビで,バージ底面と海底に分布することが以前の研究により把握されている.一昨年度と昨年度には,数値解析により,バージ底面の雑音源を前方照明,海底の雑音源を後方照明とした探知予測を行った. 最終年度では,予測に従ってイメージング装置とターゲットを想定海域に配置した実海域試験を平成26年11月10-14日に行った.ターゲットには平板を複数用いて様々な形状に配列し,周囲雑音を用いてターゲット散乱波あるいは直達雑音をイメージング装置で計測した.また,同時に1対の正四面体アレイを用いて雑音源位置も計測した. まず,雑音源位置計測のデータを解析すると,以前と同様に,雑音源はバージ底面と海底に分布しているのを改めて確認した.次に,イメージング装置の計測データを解析した.受波ビームに捕らえられたターゲット散乱波あるいは直達雑音より,150-200kHzの帯域レベルを求めて画素値とした.前方照明では,ターゲット散乱波が優位に計測され,ターゲット方位の画素値はそれ以外の方位より大きくなった.逆に,後方照明では,直達雑音が優位に計測され,ターゲットは海底からの雑音を遮るように作用し,ターゲット方位の画素値はそれ以外の方位に比べて小さくなった.いずれの結果も数値解析による探知予測を裏付けた.これらの成果は,周囲雑音イメージングでは,雑音源位置を予め把握して,慎重にターゲット映像を解釈する必要性を示している.
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