研究課題/領域番号 |
24561000
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大塚 尚寛 岩手大学, 工学部, 教授 (40133904)
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キーワード | 露天採掘 / 二酸化炭素 / 低環境負荷 / 排出量削減 / GIS / GPS / VRS / 環境保全 |
研究概要 |
本研究は、最新のITを活用した省力・低環境負荷型の露天採掘システムの構築と、露天採掘および骨材生産に伴って発生するCO2の排出削減に関するLCA(ライフサイクルアセスメント)手法の確立を目的とするものである。平成25年度は、平成24年度内に達成できなかった研究の補完と、“持続可能な開発”を実現するための環境調和型露天採掘方式の開発を目指して研究を実施した。得られた研究成果は、つぎの通りである。 1.GPSを登載した稼働重機からの位置情報を採石場内に設置した無線LAN中継基地を介して、事務所内の中央管理システム用ホストコンピュータに転送し、各重機の作業工程をリアルタイムに制御できるシステムを構築した。2.貴重な動植物への影響の軽減を図る開発計画の策定に資するために、露天採掘場周辺の植生・動物調査を実施し、これらの情報をGISを利用してデータベース化し、現地に生息する動植物の生態系を分断することがない採掘計画を立案できるシステムについて検討した。3.地域景観保全を目指した採掘区域の設定および修復緑化計画の策定に資するために、VRS(バーチャルリアリティシステム)を用いた露天採掘場の修復緑化シミュレーションと動的景観評価等により、景観保全を考慮した露天採掘計画立案システムを構築した。4.採石場内の粉じん発生状況を多点でモニタリングし、リアルタイムで粉じん濃度を推定できる簡易型パッシブサンプラーを用いた飛散粉じんモニタリング法を開発した。5.砕石運搬過程におけるCO2排出量を可視化する方法として、物流活動に伴うCO2排出量の算定法であるトンキロ法とGIS(地理情報システム)のネットワークシステム機能を利用した「見える化」システムを構築した。このシステムを利用して、東日本大震災の復興資材として大量の需要がある砕石の被災地への運搬シミュレーションを行い、砕石輸送の最適化を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、平成24年度内に達成できなかった研究の補完と、“持続可能な開発”を実現するための環境調和型露天採掘方式の開発を目的として研究を実施した。現在までの研究達成度は、つぎの通りである。 1.稼働重機に登載したGPSの位置情報を採石場内に設置した無線LAN中継基地を介して、事務所内の中央管理システム用ホストコンピュータに転送し、各重機の作業工程をリアルタイムに制御できるシステムを構築した。 2.“持続可能な開発”を実現するための環境調和型露天採掘方式の開発についての達成度は、次の通りである。(1)自然環境保全対策:①露天採掘場周辺の植生・動物調査を実施し、これらの情報をGISを利用してデータベース化し、現地に生息する動植物の生態系を分断することのない採掘計画を立案できるシステムを検討した。②VRSを用いて露天採掘場を含む地域景観を全方位でシミュレーションし、採掘跡地の地域景観阻害度を評価する方法を考案し、地域景観保全を目指した採掘区域の設定および修復緑化計画の策定に資するシステムとした。(2)生活環境の保全対策では、リアルタイムで粉じん濃度を推定できる簡易型パッシブサンプラーを用いた飛散粉じんモニタリング法を開発した。しかし、露天採掘に伴う騒音・振動、粉じん、水質汚濁、ダンプ公害等による周辺地域の生活環境への影響を最小化するための低環境負荷型の採掘・生産を可能にする環境リスク管理システムを構築するまでには至らなかった。 3.平成26年度に実施を予定している露天採掘および骨材生産に伴って発生するCO2排出量削減に関するLCA手法の確立の一部として、砕石運搬過程におけるCO2排出量を可視化する「見える化」システムを開発した。このシステムを利用して、大量の骨材需要がある震災復興地域への砕石輸送の最適化について、具体的な検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
露天採掘および骨材生産に伴って発生するCO2排出量削減に関するLCA手法の確立 1.露天採掘では、森林伐採・剥土・穿孔・小割・積込・運搬等の各作業工程で各種の重機が使用されており、稼働時における各重機のCO2排出量を把握する必要がある。そこで、各重機の稼働時のCO2排出量を測定し、作業工程別に時間当たりのCO2排出量を算出して原単位を求める。 2.複数の重機が稼働する採掘現場のCO2排出量を削減するためには、現場全体の最適化を考慮して、各重機の稼働時間を必要最小限に抑えることが重要である。そこで、現場での作業工程を各重機の稼働位置やサイクルタイムを見える化できるシステムを完成させて、各重機のCO2排出量を1.で求めた原単位を用いて稼働時間毎に積算して、現場全体のCO2総排出量をリアルタイムに算出・評価できるツールを開発する。 3.露天採掘跡地を建設廃棄物最終処分場に転用することの有効性をCO2排出量削減の観点から立証するために、新規に最終処分場を建設する際に排出されるCO2総量を算出し、露天採掘で発生したCO2排出量が廃棄物最終処分場に転用した場合にどの程度相殺されるかを試算して推定する。 4.露天採掘場地域が開発以前に有していたCO2吸収機能を推定する方法として、開発以前の地形を数値地形モデルにより再現して、植生被覆面積を求める。採掘場周辺の植生調査を行い、生息植物をリストアップする。植物種、繁茂状況、CO2吸収能、植生被覆面積から、開発以前の露天採掘場地域のCO2吸収量を算出する。 5.自然回帰型修復緑化によって再生されるCO2吸収能を算出するとともに、植生の葉緑素量をリモートセンシングデータを用いて測定することによって評価できるシステムを開発する。
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