研究課題/領域番号 |
24561001
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
安達 毅 秋田大学, 国際資源学教育研究センター, 教授 (40262050)
|
研究分担者 |
別所 昌彦 秋田大学, 国際資源学教育研究センター, 准教授 (40398425)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 太陽光発電 / 太陽電池用材料 / 太陽光発電導入シナリオ / 金属供給リスク / リアルオプション分析 / 高純度シリカ / アモルファスシリカ |
研究概要 |
本年度は、太陽光発電に関する基礎データの収集と文献調査を行った後、太陽電池セルタイプ別に発電効率や発電単価コストを導入ファクターとしてとらえた世界での太陽光発電導入シナリオを推定するモデルの開発を行った。2050年までの総導入需要に対してセルタイプ別シェアを算出し、その結果からレアメタルでは電極として用いられている銀の資源制約リスクが高いと考え、銀の需要シナリオを推定した。 また我が国の太陽光発電導入拡大のリアルオプション分析では、化石燃料価格の推移が太陽光発電導入のファクターになるととらえたモデル化を試みた。モデルに固定価格買取制度など我が国の政策をどの程度組み込むかは検討課題であるが、化石燃料価格変動を確率過程としてとらえたリアルオプションの基本的なモデル化を行うことができた。 さらに、共同研究者では、太陽光発電のうち80%以上を占めるシリコン系について、その原料である石英・珪石などの二酸化ケイ素(シリカ)の持続的な供給可能性についても検討を行い、シリコン原料に適する高純度のシリカを産出する地域は、ごく一部の国に限られており、賦存量の点からも原料供給に適する地域はさらに限定される。したがって、今後の太陽光発電の導入拡大によっては原料供給に脆弱性を持っていると予測された。 つぎに、これら高純度シリカの代替となりうるアモルファスシリカについて評価を行った。アモルファスシリカは、苛性アルカリに溶解するという結晶質シリカにはない性質を有している。そのアモルファスシリカを多量に含む生物起源珪藻土は我が国にも賦存しており、アルカリ溶解、pH調整、酸リーチングの工程を実施することで、高純度シリカが生成される事を実験により確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、太陽電池の材料となる銀ならびに石英・珪石の生産量データ等を文献調査と分析によりおおよそ確認できた。また、モデル化した太陽光発電導入シナリオの結果を用いて、銀需要の将来予測まで行えたことは、当初の計画と一致する。ただし、モデルの完成度を高めるためさらに対象とする金属種と影響を与えるファクターを増やし、またそれに付随してデータ収集を継続する必要がある。我が国の太陽光発電導入拡大のリアルオプション分析については、大枠のモデル化の段階であり、焦点とする政策による影響をどのようにモデルに組み込むかは次年度以降の課題である。 高純度シリカ資源量については、詳細ではないものの高純度石英資源の分布や動向についての知見を得ることができた。また、我が国の太陽光発電導入拡大のリアルオプション分析では、大枠のモデル化を行い分析に必要な枠組みの設定までを行えた。さらに、国内での生産も見込まれる珪藻土・地熱水などのアモルファスシリカ資源を中心に回収試験を行うことで、未利用シリカ資源の供給可能性についても示唆できた。
|
今後の研究の推進方策 |
太陽光発電用デバイス材料となるシリコン、レアメタル等の各種金属資源の供給可能性とそのリスクについて定量的な指標の提案を行うことを目指す。資源ポテンシャル、市場の寡占度、リサイクル率などいくつかの観点からリスク項目を洗い出し、整理することからはじめ、特に生産国のカントリーリスクについては新たな定量化の方法を模索することにする。これらによって総合的な太陽光発電普及における材料供給リスクを評価することを目指す。我が国の太陽光発電導入拡大のリアルオプション分析については、政策による投資への影響、二酸化炭素排出権の影響などを明示的にモデルに組み込むことを目標とする。 シリコンに関しては、これまでの製造工程が半導体産業をベースにしてきた経緯から近年変化が見られることから、中間生成物である金属シリコンの動向についても検討を加える予定である。また、未利用シリカ資源の高純度シリカ精製の可能性についても、アモルファスシリカを対象に、シリカ回収ならびに不純物除去試験を通して評価することとする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
レアメタルを中心として鉱山データの取得、金属価格データの収集ならびに政府機関、情報機関が発行する統計書やレポートの購入を計画している。 シリコン等において未利用資源からの供給可能性を検討するにあたり、アモルファスシリカ溶液からの固液分離においてメンブレンフィルターを用いて加圧ろ過方式で固体シリカを回収する予定である。また、これまでの成果を発表するために国内外の学会への参加費も計上している。
|