研究課題/領域番号 |
24561001
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
安達 毅 秋田大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40262050)
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研究分担者 |
別所 昌彦 秋田大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40398425)
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キーワード | 太陽光発電 / 導入シナリオ / 資源供給リスク / リアルオプション分析 / 高純度シリカ |
研究概要 |
太陽光発電の導入拡大にともなう銀の供給リスク分析ついて本年度は、まず太陽光発電の将来需要の予測から必要とされる銀の需要量を算出し、現状の工業利用全量の約2倍に達することが示され、将来的なリスクが高いことがわかった。これを踏まえて、銀の供給側のリスクを定量的に示す指標を開発した。この指標として次の6つを提案し、それぞれについて過去20年間の時系列でのリスク変動を調査したところ、生産国集中度とカントリーリスク以外の項目で、銀の供給リスクが高まっていることが示唆された。 また、我が国の太陽光発電導入拡大のリアルオプション分析では、化石燃料価格が将来的に確率過程に従って変動し、高騰する化石燃料を代替する形で太陽光発電が導入されるとするリアルオプションモデルを開発した。その際に太陽光発電による売電が固定価格買取制度に支えられていることや二酸化炭素排出権価格も考慮に入れたモデルとした。これを基本モデルとして、数値計算によりオプション価値を求めたところ、現在の2倍程度まで化石燃料価格が上昇したときに、太陽光発電に投資することが最適であることが求まった。 さらに、今後ますます需要の増加が見込まれる太陽電池用シリコンの原材料となる金属シリコンは、供給不足が懸念されている。そこで、我が国での未利用シリカ資源の高純度シリカ精製の可能性について、地熱発電所から産出する溶存シリカを含む地熱水を対象に、凝集剤を用いた溶存シリカ回収試験を行った。その結果、ゼラチンを凝集剤として用いると溶存シリカの凝集沈殿効果が確認され、室温条件下では、酸性~中性付近のpH領域において地熱水から約80%の溶存シリカを加圧濾過により容易に固液分離できる事を確認した。また、回収されたシリカは600℃での焼成処理により、含まれているゼラチンを分解除去する事ができ、より純度の高いシリカが得られる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度開発した太陽光発電の導入拡大にともなう銀の供給リスク分析では、次の6つのリスク指標の提案を行い、それぞれについて過去20年間の時系列でのリスク変動を調査した。1)価格変動リスク、2)資源ポテンシャルリスク、3)バイプロダクト生産リスク、4)リサイクルリスク、5)生産国集中度リスク、6)生産国カントリーリスクである。これらの指標について銀については基礎的な分析を終えている。同時に、2050年までに太陽光発電パネルに使用される銀の消費量の推定も行った。基本モデルが固まった段階であり、おおむね本年度の到達度を達成していると考える。 また、我が国の太陽光発電導入拡大の経済性分析でも、リアルオプションモデルの枠組みに合わせたモデル化を進め、基本的な結果の算出に到達している。このモデル化が分析の最重要点であることから、目的に合った分析が進んでいると考える。 最後に、太陽電池用シリコン製造に関して、既存プロセスおよび金属シリコン生産量に関しての知見から今後の動向についての知見を得ることができた。国内において埋蔵量が期待される未利用の地熱水中の溶存アモルファスシリカ資源ついては、凝集沈殿法による回収試験を適用する事で、新規のシリカ資源としての供給可能性についても示唆できたことから、本年度の目標を達していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、太陽光発電の導入拡大にともなう銀の供給リスク分析については銀供給国のカントリーリスクについてのモデル化を見直し、より研究内容に合致したモデルもしくは指標の検討を行う。カントリーリスクに他の指標との融合を測り、総合的な資源供給リスクを銀を題材にして行い、その結果をもとに太陽光発電の導入拡大への影響について課題を提案することを目指す。 また、我が国の太陽光発電導入拡大の経済性分析については、基本モデルの精査を行うと共に、いくつかの主な要因をもとにシナリオ分析・感度分析を行うことで、日本の太陽光発電導入計画について一定の提言を行うことを目標とする。 さらに、未利用シリカ資源の高純度シリカ精製の可能性について、これまでの研究で得られた生成物についてのキャラクタリゼーションを行い、太陽電池用シリコン原料としての評価・検討を行う。また、地熱水シリカへ資源化回収プロセスを適用した場合の供給可能量の概算や今後の太陽電池用シリコン製造に与える影響についても評価する。 いずれも、学会発表や論文発表を通じて公表することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会発表のための海外旅費が申請時と若干異なったための差額に相当する。 データ収集および他大学研究者との打ち合わせのための国内旅費として使用する予定である。
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