研究課題/領域番号 |
24561004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 澄彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30273478)
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キーワード | フラクチャー / EOR / ジオメカニクス / 掃攻率 / 流体圧力 |
研究概要 |
本研究は,EOR 流体の圧入に伴う間隙圧力の変化量と岩質部へのEOR 流体浸入量の変化量及びフラクチャー内チャンネル面積の変化量の関係を求め,この関係を考慮してEOR 流体の圧入圧力を変化させることでフラクチャー型油ガス田における原油・天然ガスの回収率を向上させる新たなEOR 手法を提案することを目的としている。 平成24年度は,シリコンゴムと透明エポキシ樹脂で作製した300mm×300mmの単一フラクチャーモデルに対して水攻法の流動可視化実験を行い,フラクチャー内の掃攻挙動はフラクチャーの開口幅分布と流体の流入流出位置によって大きく変わることを確認した。また,その研究の成果を平成25年度石油技術協会春季講演会にて発表を行った。 平成25年度は,フラクチャー内における油掃攻挙動の流体圧依存性について理解するため,流体圧に耐えられる200mm×200mmの可視化フラクチャーモデルを新たに作成してフラクチャーの平均流体圧を変えた水攻法可視化実験を行い,そのときの油掃攻挙動を観察した。フラクチャーの平均開口幅は,油の圧入量をフラクチャー面積で除することで求め,作用させた流体圧の範囲では平均開口幅は流体圧の増加にともなってほぼ直線的に増加することを確認した。また,面積掃攻率は,流体圧の増加にともなって増加するが油回収率にはこの傾向が見られず,その理由として,垂直掃攻率が開口幅の拡大にともなって低下することが考えられた。さらに,フラクチャーの浸透率を相対的に低下させる方法として,ゲル化剤によるブロッキングを考え,ゲル化剤候補としてセルロースをベースとした低環境負荷の増粘剤の適用について検討した。これらの研究成果については,平成26年度石油技術協会春季講演会にて発表を行う予定である。また,ゲル化剤によるブロッキングについて,石油技術協会誌に論文を投稿し掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的を達成するための研究計画は以下のとおり,1) 単一フラクチャーを含む供試体に対する間隙流体の圧入実験および開口幅を変化させた流動実験と流動可視化実験(平成24 年),2) 流動実験の数値シミュレーション(平成25 年),3) 数値計算によるフラクチャーネットワークのフラクチャー剛性評価(平成25,26 年),4) フラクチャー型油ガス田における新たなEOR 手法の提案(平成26 年)である。 これに対して,現時点での進捗状況は,研究項目1) がほぼ終了した状況である。これは,平成24年度に導入したフリーピストンセルの納期に予想以上の期間を要し,計画通りの実験ができなかったこと,可視化フラクチャーモデルの作製に試行錯誤を繰り返したことが遅れの大きな原因である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にしたがって流動実験のシミュレーションを行うことで,岩質部に浸入するEOR流体の浸入領域,フラクチャーおよび岩質部における流体圧分布を評価する。また,単一フラクチャーモデルおよび複数のフラクチャーからなるフラクチャーネットワークモデルに対してFEM による力学解析を行い,フラクチャー開口変位と封圧及び流体圧の関係からフラクチャー剛性を評価する。以上の実験と数値計算結果を統合することで,流体圧の変化量と岩質部へのEOR 流体の浸入量の変化量及びフラクチャー内のチャンネル面積の変化量を関係付ける。この関係を用いて,EOR 流体の圧入圧力を変化させることでフラクチャー型油ガス田の回収率を向上させる新たなEOR 手法を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験消耗品について計画通り購入して研究を進めたが,年度末近くになってわずかに残金が発生した。年度末に無理に消化することを避けた。 次年度使用額は,未実施の実験消耗品(バルブ,差圧計,コアホルダーの追加作製,岩石コア試料)の購入の一部として使用する予定である。
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