水酸化アルミニウムに対するAs(V),Zn(II),Pb(II),Cd(II)などの有害元素の共沈機構は表面錯体と表面沈殿の組み合わせであることがわかったが,廃水処理が達成されるような領域における主要な機構は主に表面錯体であることが判明したため,廃水処理に有用な定量モデルの構築を目指して,水酸化アルミニウムに対する表面錯体モデルを構築した。表面錯体モデルには拡散層モデルを用い,交換容量の設定に必要な比表面積はEGME吸着法により実験的に求めた324.2m2/gを,サイト密度は文献値である13.8nm-2をそれぞれ用いた。表面錯体平衡定数はそれぞれ単成分系で得られた実験値へのフィッティングによって求めたが,それらの値はKaramalidis and Dzombak(2009)が提唱している既往の文献値とほぼ同様であった。 水酸化アルミニウムによるSi(IV)除去に対しては,反応時間1分間程度の短時間の処理では表面錯体形成が主体であったことから,上述と同様の表面錯体モデルによってSi(IV)除去を定量的に再現することが可能であった。しかしながら,反応時間が長くなるにつれて表面錯体形成のみならず,カオリナイト沈殿生成が主な機構となるために,60分以上の反応時間の場合には表面錯体モデルに加えて反応速度を考慮した沈殿生成モデルの組み込みが必要であった。沈殿生成に対して飽和度に対する1次反応速度式を仮定し,その速度定数を経時変化実験へのフィッティングによって求めたところ,反応時間が長い場合におけるSi(IV)除去もある程度定量的に再現可能となった。 得られたモデルに水酸化第二鉄への表面錯体モデルをも組み込んだところ,実廃水の中和実験を定量的に再現可能であることを確認した。
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